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2023年3月19日 (日)

イタリア映画史を書く:その(4)

『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』を出した時にゲラの段階まで迷ったのは、イタリア人名の日本語表記だった。結論から言うと、フェリーニの奥さんで女優のジュリエッタ・マジーナを従来通りのマシーナとした以外は、すべて原語の発音に近づけた。

この件については既に前に書いたけれども、もう少しくわしく書く。決定的なものとしては、女優の(ジーナ・)「ロロブリージダ」だろう。これは従来ロロブリジーダと呼ばれていた。本当を言うとロッロブリージダだが、これを言い出すとフェリーニはフェッリーニとなってしまうので。

女優では従来のシルヴァーナ・マンガーノを「マンガノ」にした。これは既に2001年の「イタリア映画大回顧」でマンガノにしていたので、本当ならば「マーンガノ」とすべきところをマンガノにした。この2つが有名女優では大きいだろう。

男優のヴィットリオ・ガスマンは「ガズマン」と直した。彼はマストロヤンニなどに比べると日本では知られていないが、息子のアレッサンドロ・ガズマンは今も活躍中なので。今後はこの表記を使って欲しい。

細かいところでは戦前から活躍するカルミネ・ガローネや21世紀に出てきたマテオ・ガローネを「ガッローネ」にした。これらはフェリーニほど定着していないし、マテオに関しては「ガッローネ」の表記も見られるから。ルキノ・ヴィスコンティは「ルキーノ」に統一したが、これは最近の本やDVDでは使われることもある。

『流されて』などの女性監督リナ・ヴェルトミュラーは「リーナ・ヴェルトミューレル」と大きく変えた。フランス人の場合もそうだが、日本語のイタリア人表記では英語式の発音が時々見られる。例えば、ヴェネツィアやロカルノの国際映画祭のディレクターをやったマルコ・ミュラーは「ミューレル」が正しい。

そういえばベネチア、ベニスは「ヴェネツィア」にした。これも「ヴェネーツィア」と書く方がさらに近いが、これだとどこかわからなくなる。ミラノを「ミラーノ」、ナポリを「ナーポリ」、あるいはイタリアを「イタ―リア」としないのと同じ。要はわかる範囲でだいぶ近づけた。

ゲラの段階でいろいろ変えたのは、イタリア映画祭を一緒に立ち上げた岡本太郎さんからの指摘があったから。岡本さんは、集英社のサイトに載せるこの本の記念対談をする前にゲラの段階で読んでもらった。確かにこの本は今後いろいろな時の参照となるから、この機会に直しておかないと今後はずっと直らないかもと思った。

ならば、ジュリエッタ・マシーナも「マジーナ」にしておけばよかったと今になって後悔している。これはあと書きには明記したけれども。

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