『幻滅』はおもしろい
グザヴィエ・ジャノリ監督の『幻滅』を劇場で見たが、実におもしろかった。この監督は『ある日突然、スーパースター』(2012)が才気煥発の秀作だったが、今度はバルザック原作の歴史もので2時間半。躊躇していたが、友人がいいと言うので見に行った。
物語はフランス中部の町アングレーム(国際漫画祭で名高い)に住む文学青年リュシアン(バンジャマン・ヴォアザン)が、愛する貴婦人ルイーズと駆け落ち同然でパリに行き、食べるために新聞記者としてありとあらゆることを書いて生きのびてゆくさまを描く。
とにかく出版社(社長ドリアはジェラール・ドパルデュー!)や新聞社の無茶苦茶ぶりが見ていて楽しい。新聞社には演劇や小説を絶賛する条件で劇場や出版社から金が舞い込む。ドリアもリュシアンの詩集は出そうとしないくせに、彼が書く新聞に大金を持ってナタン(監督のグザヴィエ・ドラン!)の本の宣伝を依頼する。
リュシアンは次第に金のために何でもするようになり、女優志望の恋人を作り、爵位まで得ようとする。ドパルデューやドランも有名だが、上品な夫人はセシール・ド・フランスだし、その親戚で意地の悪いデスパール公爵夫人はジャンヌ・バリバール。出版社の大物はルイド・ドゥ・ランクザン(『あの夏の子供たち』の父!)だし、2年前に亡くなったジャン=フランソワ・ステヴナンまで出てくる。
ゴダールやトリュフォーの映画に出ていたステヴナンは、劇場を盛り上げたり滅茶苦茶にしたりする仕掛け人サンガリを演じる。事前に関係者からお金をもらって10名ほどのサクラを引き連れて劇場に乗り込み、拍手喝采から花吹雪、あるいは非難の声にトマト投げまで何でもやる。その愉快な悪党ぶりが見ていて嬉しくなる。
そんな名優たちが集まって、実に楽しそうにコスチューム・プレイを演じる。いさかか誇張気味ではないかと思うが、サンガリが劇場の座席下に仕込んで一斉に拍手をする機械を拵えて見せる場面など全体に手が込んでいて、2時間半はあっと言う間。
そして終盤、リュシアンにも終わりが訪れるが、それもまたサンガリの仕掛けに始まる。いつの間にやらナレーションがバルザックの声で、それはある人物が話していたと知るという凝った構造。CGなどを使っているのだろうが、ヌーヴェルヴァーグの前のジュリアン・デュヴィヴィエやマルセル・カルネを思い出すような大作感があった。
「読売」の記者が「ふとした時、思い出す映画になりそう」と書いていたが、善意の文部次官を貶めるヤラセ記事を書いた新聞ならそうかもしれない。
前に書いたと思うが、明日イタリア文化会館でトークをする。入場無料だが、要予約。よろしく。
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