『茶飲友達』の衝撃
2月7日に始まった外山文治監督『茶飲友達』をようやく劇場で見た。話題が広がって一ヶ月後には日比谷のシャンテでも上映された映画で、『カメラを止めるな』と同じくENBUゼミナールの「シネマ・プロジェクト」の1本。
こちらは『カメラを止めるな』のようなエンタメ作品ではないのであれほどの大展開はありえないが、それでもこんな地味な内容の映画が今どき2カ月も上映が続いているのは珍しい。
内容は高齢者向け売春クラブの話で、2013年に実際に摘発された事件をもとにしている。冒頭に「茶飲友達 募集」という3行広告を見て電話をする高齢の男(渡辺哲)が出てくる。妻の写真が写るから亡くしたのだろう。電話をすると「ティー・フレンドです!」と明るい声。会うと若い女性のマナ(岡本玲)と年輩の女性がいて、「煎茶コース」と「玉露コース」を説明する。
「煎茶コース」は本当の茶飲友達だが、「玉露コース」は肉体的な接触を含む。マナは会社を「ファミリー」と呼び、「わかりました」は「承知です!」と言わせる。こんな日本語に違和感を感じながら、60歳以上の中年女性が嬉々として70歳以上の孤独な男性に呼ばれて会いに行き、慰める姿を次々に見てゆく。
会社を運営するのは一見明るい20代の若者たちで、映画は軽いトーンで進む。だが彼らはパン屋の父親とうまくいかない青年や家庭持ちと不倫をして妊娠してしまった娘(海沼未羽)など、実はそれぞれが問題を抱えている。特に妊娠した女性の相手男性とのやり取りや医者との会話など実にリアル。
マナ自身が病気の母親との確執で悩んでいる。万引きをしている中年女性・松子(磯西真喜)を見つけて巧みに誘って「ティーガールズ」の一員にしてしまうが、松子はマナの悩みを知ってアドバイスをする。
つまりは社会からはみ出そうな若者が、生活に困った60歳以上の女性たちを励まして売春をさせ、70歳以上の小金はあるが孤独な男性から金を巻き上げる。会社は「ファミリー」と呼ばれ、若者はお金がもらえてそこで暮らすこともできる。中年女性は若者と一緒に働いてお金がもらえて、男たちに求められるのも悪くない。老いた男たちは女性を抱いて生き返った気がする。
つまり、三方良しというか、ウィンウィンで誰も困らない。ある時、高級老人介護施設に住む男性から電話があり、そこからさらに大きく広がりかけるが、そこで事件が起こる。
最初から最後まで画面から目が離せなかった。実際に起きた事件だが、メイン以外の若者や高齢の男女のほとんどはワークショップで見つけたという。だから、ある一定期間のなかで自然に熟成させていったリアリティーが画面全体を覆う。カメラも丁寧で、人物が住む部屋に差し込む光や周囲の風景を写し取る。
高齢者の孤独やセックスの問題と若者の生きづらさを結びつけ、社会的な「正しさ」とは何か、「幸せ」とは何かを直球で問いただす。今年前半の邦画最大の問題作である。
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