これからの大学教育:その(1)
「これからの大学教育」と大きく構えたが、要は大学も変わりつつあるということ。それは文科省も大学も学生も教員も。みんな好きな方向に向かっていて、誰にもどうなるかわからないのが現状では。
文科省に関してはここに書いたと思うが、この20年間、どんどんヘンな方向に行っている。半期で必ず15回の授業をすることを義務づけたために、休日にも授業をすることが増えた。いったい、授業の回数を2回増やしたから教育の効果があがるのか。むしろ学生も教員も自由な時間を増やした方がいいのでは。
全国の大学に配っていた補助金を減らして、個別案件の申請ベースとした。これによって教員の書類仕事は格段に増え、いわゆる「一流」でない大学の補助金は大幅に減った。そういう大学は常勤教員を減らし、多くを非常勤講師に頼むようになる。
今や定員割れの私大は全国で5割。学費は上がる一方だ。それなのに大学や学部の新設が増える。特に「専門職大学」なるものを全国に作り、「実務家教員」=「元社会人で成功した人」を専任教員にした。これではまともに学問を研究する人材は減るばかり。
私が勤務している大学は幸いにして定員割れはしていない。それにしても学費の金額を聞くと唖然とする。今や国立大学でも50万円を超しているのだから。私が大学に入学した時、14万円が18万円に上がってちょっとした話題だったことを思い出す。物価は1.5倍にもなっていないのに、大学の学費は3倍近くなった。
さらに理系を強化して文系学部を減らす動きがある。この中心が文科省か自民党か経団連か知らないけれど、とんでもない話だ。明治以来、あるいはそれ以前から培ってきた日本の人文研究を一挙に縮小しようというのだから、傲慢にもほどがある。日本学術会議を政府が仕切ろうとしている話はまだ揉めているが、それもみな「学問軽視」から来たこと。
私は10年後には大学は大きく変わっていると思う。自分はあと数年でいなくなるから「逃げ切り」だけど、今の30代、40代は専任教員でもどうなるか全くわからない世界が訪れるのでは。その時、日本はどうなっているだろうか。
そんなことを考える毎日だけど、入学したての1年生を見るのは本当に気持ちがいい。みんな、文字通り「期待に目を輝かせている」。コロナ禍が一応明けたせいもあるのだろう。教員にしても、これほど多くの学生を学内に見るのは本当に久しぶりで嬉しい。この新鮮な学生たちは、たぶん半年後には大きく変わっているだろう。問題は、どの方向にか、だが。
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