『聖地には蜘蛛が巣を張る』に考える
イラン出身でデンマークに住むアリ・アッシジ監督の『聖地には蜘蛛が巣を張る』を劇場で見た。イランで実際に起きた娼婦連続殺人事件を扱ったものだが、強いメッセージ性を持ちながらも犯罪ジャンル映画のようなサスペンスも感じさせた巧みな映画だった。
舞台はイランの聖地として知られるマシャド。ところがそこには麻薬に溺れた女達がいて、金を稼ぐために街頭に立って客を探す。ある時、そんな女たちが連続して殺される事件が起こる。そこに女性ジャーナリストのラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)がやってきて取材を始める。
映画は始まって15分ほどで犯人と思われる男サイードの姿を映し始める。彼が自宅で娼婦を殺して路上に捨てる過程を克明に見せてゆく。同時に彼が家族思いであることも見せる。ラヒミは自ら客の振りをしてサイードの家に行き、何とか警察に通報して犯人は逮捕される。
118分の映画で犯人が逮捕されるのは、1時間たったくらいか。後はその後日談というか、殺人犯が社会をよくするために娼婦を殺したという主張がだんだん広がってゆくさまを描く。隣人たちは家族にやさしくし、裁判になると男を無罪にしろというデモが起こる。
ラヒミは犯人サイードや家族に会いに行き、彼らの主張を映像に収める。本人も家族も周囲も全く揺るがない。見ているとラヒミの身が危ないのではという不安に駆られてしまい、それは最後まで続く。
映画は数名の女性の殺人の場面を含めて、最後まで全部見せる。
もちろんイランでは撮影できない
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