『帰れない山』の文学性
ベルギーのフェリックス・ヴァン・ヒュールニンゲンとシャルロッテ・ファンデルメールシュの共同監督でイタリアで撮った『帰れない山』を劇場で見た。予告編ではピンとこなかったが、数日前に発表されたダヴィッド・ディ・ドナテッラ賞(イタリアのアカデミー賞)でベロッキオの『夜のロケーション』を押さえて作品賞を取ったので気になった。
見てみると、大傑作の『夜のロケーション』(こちらは監督賞)に比べたら何でもないが、文学作品を丁寧に映画化した感じの力作だった。原作を書いたパオロ・コニェッティは1978年生まれで『帰れない山』が最初の長編というが、いかにも小説家の自伝的内容で映画にも文学性が溢れていた。
映画は40歳くらいの男の回想的独白で始まる。トリノに住む12歳のピエトロは夏休みを母親と共に山の中に家を借りて過ごしていた。そこで村で唯一の子供だったブルーノが同じ年だったこともあって、仲良くなる。父は数日やってきて2人を山に連れてゆき、母はブルーノに勉強を教えた。彼らはブルーノをトリノに連れて行って一緒に育てようと考えるが、ピエトロは反対だった。
そんなこともあってピエトロは次第に山に行かなくなる。ピエトロが山に行ったのは30歳を超えて父が亡くなってから。ピエトロは父に反抗し、放浪生活をしていたが、かつて借りていた家に行く。そこでブルーノと再会し、父が山荘を建てようと土地を買っていたことを聞いて、2人はそれを建て始める。
それからはチベットに惹かれて通い出し小説を書き始めるピエトロと、あくまで山にこだわって最低限の生活をしようとするブルーノの道は再び分かれ始める。ピエトロはチベットの女性と出会い、ブルーノはかつてピエトロが山に連れて行った女性と仲良くなる。
30年余りを一人の中年男の語りで進め、父親との確執や自分探しを淡々と見せてゆく。ピエトロとブルーノはあまり話さないが、自然にお互いの違いを理解しあい、遠くから見守る。そして映画の大半に壮大なアルプスの自然のさまざまな姿が顔を出す。
2時間27分、私はその語りの自己充足的な雰囲気が少し気になったが、少年時代の友情や父親との関係など思い当たることも多く、十分に楽しめた。父親の夢をかなえるために、30歳を過ぎた男二人が自分たちだけで家を建てるなんてロマンチック過ぎるが、この場面が一番よかったかもしれない。
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