『EO イーオー』体験
イエジー・スコリモフスキー監督の『EO イーオー』を劇場で見た。ロバが主人公で、ロベール・ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』を現代的に解釈したというから気になっていた。ところがこの映画はブレッソンとは全く逆方向の演出で、ある種不思議な体験をした。
ブレッソンの映画は、要素を極限まで抑えてミニマルな美学を追求する。ところがこの映画ではカメラは揺れに揺れ、ロバの目から見た光景をデジタル映像まで使ってシュールに表現する。そのうえ、物語は不幸のてんこ盛りだ。
題名の「EO」はロバがサーカス団で呼ばれる名前だ。一緒にサーカスに出る若い女性のカサンドラに可愛がられているが、動物愛護団体が「動物虐待」だと抗議し、牧場に引き取られる。カサンドラがそこに会いに来て彼女と出かけるかと思いきや、カサンドラの恋人は許さない。ロバは1人で歩き出す。
そこからロバは偶然にサッカーの試合を見ていたら、鳴き声が勝ったチームの応援をしたと勘違いされて、負けたチームに殺されそうになる。治療を受けて立ち直り、仕事をさせられる。そこから牛と一緒に食肉工場に運ばれるが、なぜか運転手が殺されて、その後にイタリア人司祭に連れられる。そこには司祭の母の伯爵夫人(イザベル・ユペール!)がいて、息子を非難する。
人間の都合に振り回されると言えばそうだが、いくらなんでもあまりに奇想天外すぎるだろう。さらに風景が赤く染まったり、獲物を狙うレーザー光線が写ったり、たぶんロバの目に写りそうな世界を過激に表現する。いいのはロバの顔にも目にも表情らしきものが一切ないことで、激しい事件や映像の中でただじっとしている。
スコリモフスキ監督はポーランド出身で『バリエラ』(1966)などの伝説的作品を残した後にアメリカで地味な作品を作っていた。ところがポーランドに帰国してから『アンナと過ごした4日間』(2008)以降、再び意欲的な作品を発表している。今年85歳だが、毎回、新しいテーマや撮影方法に挑んでいる。
ブレッソンとは関係がないが、一見の価値がある。
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