朝日ホールに戻ったイタリア映画祭:その(2)
イタリア映画祭は2001年から19年までは朝日ホールだったが、20年はオンライン開催、21年と22年は200席ほどのオーディトリウム渋谷での開催と後日のオンライン上映だった。だから今年は4年ぶりだったが、マリオ・マルトーネ監督『ノスタルジア』で700席を超す会場がほぼ満員になっているのは圧巻だった。
マルトーネは原題イタリアの実力派監督の1人だが、1本も日本の映画館で封切られていない。その作品が休日の午後とはいえ、満員とは。そのうえ、4年前に比べて明らかに若い客層が増えた。
さて、映画はなかなか見ごたえがあった。15歳の時に叔父に連れられてベイルートに行ったフェリーチェ(ピエルフランチェスコ・ファヴィアーノ)は40年ぶりにナポリに帰った。その後はエジプトのカイロで会社を経営し、妻もいた。まず、彼が老いた母を訪ねるシーンに涙する。母を演じるアウローラ・クワットロッキの佇まいがすばらしい。
フェリーチェは15歳の頃、悪ガキで親友オレステとバイクを乗り回していた。その頃を思い出しながら街を歩くが、思い立って中古のバイクを買って当時を思い出しながら一人で運転する。ところがある時バイクは焼かれて、壁に「帰れ」と書かれていた。彼とオレステだけが知っている過去が浮かび上がる。
この監督はもともと舞台の演出家だけあって、物語の展開や構成よりも室内シーンが際立つ。フェリーチェが母を入浴させる場面とか、フェリーチェがオレステと再会してだんだん打ち解け合う様子などを実に繊細に見せてくれた。
マルトーネ監督もそうだが、今年は私がイタリア映画祭をやっていた頃から活躍していた監督が多い。フランチェスカ・アルキブージ監督の『はちどり』は医者マルコ(これまたピエルフランチェスコ・ファヴィアーノ)の人生を15歳くらいから80歳過ぎまで描く。それも過去と現在をめまぐるしく行き来しながら。
そのうえ、登場人物に物語が多過ぎる。少年マルコは海辺の別荘で隣のフランス人ルイーザ娘(大人になってからはベレニス・ベジョ)に恋をし、結婚後も会い続ける。マルコの妻のマリーナはそれを知って不倫を繰り返し、精神を病む。娘のアデーレは相手を明かさぬまま褐色の肌の孫を生む。妻の精神科医のダニエーレを監督のナンニ・モレッティが演じていい味を出している。
アルキブージ監督は恵まれない人々、特に女性を優しく描くことに長けていてこの映画でもマリーナにそれは現れているが、このような「イタリア式喜劇」を思わせるせわしない群像劇を作るとは。
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