改正入管法と外国人労働者拡大をめぐって
9日(金)の参議院で改正入管法が成立した。同じ日に、外国人労働者の「特定技能2号」分野を建設、造船の2分野から11分野に拡大することが閣議決定された。実はこの2つは裏表でつながっていることは、「朝日」でもあまり触れられていなかった。
「朝日」の記事とネット情報を組み合わせると、「技能実習生」は87職種で最長5年(現在32万人)、2019年からこれを3年以上やると「特定技能1号」への移行が可能となった。こちらはさらに最長5年となる(15万人)。ポイントはこの2つでは家族帯同ができないこと。
同じく2019年にできた「特定技能2号」は在留期間に上限がなく、家族帯同も可能。これには試験もあるのでまだ11人しかいない。これが11分野に広がると、農業、漁業、飲食品製造、外食、ビルクリーニング、機械製造、自動車整備、航空、宿泊が加わる。これは事実上の外国人労働者拡大だろう。
もともと「技能実習生」は日本で学んだ技術を出身国に移転することを目的としていたが、それがいつの間にか「出稼ぎ」になった。受け入れ先は日本人がやりたがらない3Kの職場が多くなる。受け入れ先の変更が原則としてできないため、パスポートを取り上げるなどの人権無視が横行する。
実習生は日本に来る前に送り出し機関に払うために多額の借金をしていることが多く、ひどい職場を逃げ出しても帰国できない。すると不法就労となって、賃金未払いなど条件はさらに悪くなる。失踪した実習生は5千人を超し、死亡例も100件以上ある。今回の閣議決定はここの問題を解決せずに、「技術」を持つ労働者を増やそうというものだが、そううまくは行くまい。
基本的には「技能実習生」という制度を廃止して「出稼ぎ」を容認して、労働条件を日本人並みに整備することが必要なのだが、現在32万人の実習生をどうするのか。闇世界との瀬戸際に立つ者も多いのではないか。
一方、改正入管法は難民認定の申請中でも3回目以降の申請者は強制送還ができるようになった。そもそも難民認定が限りなくゼロに近い日本では、何度も難民申請が必要になる。これまで申請中は送還されなかったが、これからはできる。送還を妨げる行為に罰則まで作った。
そもそも難民認定の部分を改めないで強制送還を容易にすれば、帰国すれば殺される人々が出てくるだろう。それでもいらない外国人は追い返し、技術を持つ外国人労働者を積極的に受け入れるというのは、あきらかに人道的におかしい。難民を欧米並みに認定して、労働者として働いてもらえたらいいはずなのに。
以上、全く素人の意見だが、この問題は個人的に妙に気になる。
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