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2023年6月 4日 (日)

カンヌ最高賞監督のスピーチについて

カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエ監督が、授賞式のスピーチでマクロン大統領を批判した。例の年金受給年齢引き上げに際しての強硬採択に怒り、最近は文化の商業化が進んで多様な映画が危機にあることを訴えた。これに対して文化大臣はツイッターで「不公正なスピーチに驚いた」と反論した。

さらに、マクロン大統領は通常ならば自国のカンヌでの最高賞をすぐに称賛するコメントを出すが(2年前の『チタン』のように)、今回は出していないこともフランスでは話題になっている。

ところがこの一連のできごとは、私が読んでいる「朝日」には一行も載っていない。わざわざカンヌまで行って邦画の活躍と受賞作の解説だけではもったいない。記者は受賞の挨拶を最後まで聞いていないのか。翌日にはフランスの各紙に載っているが、パリ支局は教えてあげないのか。英語の業界紙サイトにも出ているし。

これに関してネットで検索したところ、共同が配信して「産経」ほか地方紙に載っているほか、「東京」の谷悠己記者が書いている。また「日経」で古賀重樹記者がネットでのカンヌ連載(8)でこの発言を評価している。

これが重要なのは、受賞のスピーチは生放送なので映画祭側も内容をコントロールできないので本当に言いたいことを言えることにある。そのうえ、世界に流れる。思い出すのは2016年のカンヌの「ある視点」で深田晃司監督が審査員賞を受賞して、挨拶の終りに「日仏映画製作協定を早く締結すべきだ」と言ったことである。

たぶんそれにはフランスの女性監督パスカル・フェランが『レディ・チャタレー夫人』(2007)がセザール賞(フランスのアカデミー賞)の作品賞などを取った時のスピーチで、「フランスは大作と自主制作の間にあった作家映画がなくなりつつある。どうにかしないと」と訴えた事実が背景にあったのではないか。

最近だと2021年のセザール賞授賞式で、女優のコリーヌ・マジエロが突然全裸になったことを記憶している。胸や腹に書いた「No Culture No Future」という文字を見せ、コロナ禍で苦境にある文化活動への支援を訴えた。

いずれにせよ、なかなか芸術家や芸能関係の人間が政治的な発言をすることの少ない日本では、こういうニュースはもっと伝えるべきだろう。そういえば、今回のカンヌで脚本家の坂元裕二さんと役所広司さんが賞を取ったが、首相や官邸や文科省からはコメントはなかった。たぶん是枝監督が『万引き家族』の時に官邸からの誘いを断ったので、同じ監督作品の脚本家も無視し、ついでに役所さんも同じ扱いになったのだろうか。

こういうことをあえて書くのが新聞だと思うのだが。

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