アーティゾンの抽象絵画展を見る
アーティゾン美術館で今日から始まる「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィズム、キュビズムから現代へ」の内覧会に行った。内覧会に行くのは本当に久しぶりで、コロナ禍以降はたぶんほとんど行っていない。
そもそも2020年の春からはいくつもの展覧会が中止になった。秋には美術館は再開されたが内覧会はなかった。内覧会が始まったのは2021年半ば頃か。ちょうど私が『美術展の不都合な真実』を出したのが2020年5月で、それ以降は気分的に美術関係者と会う気がしなかった。
今回行こうと思ったのはあの広くなったアーティゾン美術館が全館を使って抽象絵画の展覧会をやると聞いたから。そもそもこの美術館は印象派に始まってポスト印象派、フォーヴィスムにキュビスムから戦後のアメリカを中心とした抽象表現主義まで、抽象絵画の宝庫だ。日本の抽象絵画もたくさん持っている。それらに国内の美術館が所蔵する作品を足したらすごいものになるだろうと期待した。
確か4階から6階までのスリーフロアで264点の展示は圧巻だった。この館の所蔵は現代部分を除くと8割くらいであとは国内の美術館や所蔵家だが、海外からの借用まであった。最後の現代作家はほとんどが作家蔵。
冒頭にこの美術館所蔵のセザンヌ「サント=ヴィクトワール山」の絵があって、マネ、モネ、ゴッホ、ゴーガン、マティスと並ぶ。つまりは19世紀末から現代まで150年の美術史から彫刻と具象画を除いて「抽象絵画」を集めた感じ。だからもう何でもありなので、逆にそれぞれの画家が1点や2点だと寂しく思う。
特に日本の画家で村山知義や岡本太郎、田淵安一、村井正誠、山口長男、吉原次良、草間彌生などが1点でいいのかとか考えてしまう。その割にはザオ・ウーキーは6点もあるしポロックは5点ある。そんなことを考え出したらきりがないのはわかっているのだけれど。
嬉しかったのは白髪富士子さんの白い和紙の作品が3点あったことで、具体美術のなかで夫の白髪一雄の影に隠れてしまったこの画家を再評価しようという意志が感じられた。そのうち1点はこの美術館の「新収蔵作品」だった。
それから現代もよかった。鍵岡ルグレ アンヌの盛り上がった絵の具による色彩表現や津上みゆきの流れる風を見せるような手腕や横溝美由紀の禁欲的な抽象表現など、女性画家たちの活躍が目についた。どの画家ももっと大きな個展をみたいと思った。
この展覧会は今日から8月20日まで。美術を知らない学生の近現代美術入門としていいのではないかとも思った。学生料金は何と無料だし。
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