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2023年7月 3日 (月)

留学生と見るシリーズもの:その(2)

このブログは誰からも頼まれずに勝手に書いているので、基本は思いつき。映画や展覧会や読書のメモを中心に、朝起きてふと考えたことを書く。そんなわけで「その(1)」と「続きもの」を始めても、数日たつと忘れてしまうことが多い。

「留学生と見るシリーズもの」は「その(1)」を書いたのが4月26日だが、それから3カ月、さっぱり忘れていた。もうあと数回で前期の授業が終わるので、少し書いておきたい。

結論から言うと、あまりうまくいかなかった。一番はかつての大スターが、学生にはピンと来ないことにあった。例えば東宝の社長シリーズをやっても、外国人には森繫久彌のありがたみがピンと来ない。溝口、小津、成瀬、黒澤といった巨匠の映画に出ていないというのもあるかも。

それから、シリーズの第一作を見るというのもよくなかった。社長シリーズだと千葉泰樹監督『へそくり社長』(1956)が第一作だが、これはまだ面白さが足りない。第一作はお披露目程度が多く、だいたい観客の反応を見ながら3作目くらいからパターンが定着する。

シリーズものは一作だけ見てもわかるので、評判にいい作品を選ぶべきだった。例えば『宮本武蔵』の第一作は1954年の東宝・稲垣浩版にしても、1961年の東映・内田吐夢版にしても、第一作は人物紹介に近くあまり面白くない。それは『清水次郎長』シリーズも同じ。

また、高度経済成長期に向かう日本の若者の能天気な青春を見せる映画もあまり受けなかった。典型的なのは加山雄三主演の『大学の若大将』(1961年、杉江敏男、東宝)で、六本木生まれで一流私大生、スポーツ万能のモテモテ男は面白くもおかしくもない。実は私にとってもそうだけど。

まだ小林旭主演の 『ギターを持った渡り鳥』(1959年、斉藤武一、日活)の方が少しマシ。ギターを持った日活特有の無国籍的な雰囲気はおかしいし、全国(第一作は札幌)を回るのも留学生には興味深い。

高度経済成長期ものでは、『ニッポン無責任時代』(1962年、古沢憲吾、東宝)が少しだけ受けた。植木等は見るだけでおかしいから。しかしシャボン玉ホリデーもクレイジー・キャッツもお姐ちゃんシリーズも知らない学生には、やはりありがたみは半分か。

これからは任侠映画をやる予定だが、これはスタイルがあるので少しはわかってもらえるだろうか。外国人留学生からは学ぶことが多い。

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