今頃『東京クルド』を見る
2021年7月に公開された日向史有監督のドキュメンタリー『東京クルド』を、今頃になって見た。この映画が公開されたのは、スリランカ出身のウィシュマさんが亡くなって入管法改正が廃案になった直後だったこともあり、話題になっていた。
それから2年たって、ほぼ同じ改正案が先月成立してしまった。なぜこの映画を今になって見たかというと、12月の学生企画の映画祭のテーマが「移民」になったから。参加する学生たちと一緒に見た。
日本は難民条約を批准していながら、難民の認定率が1%前後という驚異的な低さだ。欧米が20%から60%であるのに比較して国際的に異常としか言いようがない。このことは知っていたが、では認定されない人々はどうなるのか、あまり考えていなかったことをこの映画を通して改めて知った。
この映画で主に描かれるのは、18歳のオザムと19歳のラマザンという2人のクルド人青年。彼らは小学生の時にトルコでの迫害を恐れた両親に連れられて日本にやってきた。彼らは入管に収監されない「仮放免許可証」を持っているが、2カ月に1度は東京入管に更新に行く必要があり、働くことも県外に移動することも許可されていない。
住民票も健康保険証もない。オザムの言葉を借りれば「いるだけ」。オザムは高校を中退して、解体の仕事をしている。入管でそれを話すと「本当はいけないんですけどね」「ではどうして食べていけるのですか?」「それはそちらの問題です」(録音テープ)。ラマザンは高校を卒業して専門学校へ進む。彼は入管で「帰ればいいんだよ。他の国行ってよ、他の国」(これも録音テープ)と言われる。
ラマザンの伯父のメメットは入管に収容されており、体調の急変を聞いた妻が救急車を呼ぶと入管で救急車が追い返される場面がある。家族の抗議の末、結局、病院に行けたのは30時間後だった。完全な人権無視だが、こんなことが担当者の判断でまかり通っているようだ。
ラマザンは最初は英語の学校に行きたかったが「仮放免」を学校が嫌がり、自動車整備の学校に入学する。自動車の学校の面談には日本人弁護士も付いて説明する。合格証書が届く場面や、入学式へ出るシーンは思わず涙が出る。しかし2年後に仕事をするためのビザが出る保証はない。
小さい頃から日本で育ち、日本語が完璧で日本で働く意欲が一杯の彼らはどうして正式に滞在できないのか。労働者受け入れ拡大を考えるならば、何より彼らからではないのか。見終わって、公開後2年たった今、彼らはどうしているのか心配でしかたがない。
日本政府は親日国であるトルコとの関係を重んじて、クルド人を難民として認めないらしい。それとこれは別なのだが。トルコがスウェーデンのNATO加盟を認めようとしなかったのは、クルド人問題を非難したからだったのを思い出した。
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