『セフレの品格』が見せる女性像
もうすぐ公開の連作映画『セフレの品格(プライド)』をオンライン試写で見た。湊よりこの大ヒットレディコミが原作で、映画版は城定秀夫が監督し、前篇が7月21日公開の『セフレの品格 初恋』、後篇が8月4日公開の『セフレの品格 決意』。
何といっても、主人公の抄子を演じる行平あい佳が抜群によかった。彼女はバツ2で高校生の娘がいる30代半ばだが、派遣のコールセンターで働いている。久しぶりの高校の同窓会に行くと、憧れだった一樹(青柳翔)がいた。産婦人科医になった一樹に誘われてホテルに行って燃え上がるが、「セフレとして」と言われて驚く。
ある時、親友の華江(片山萌美)も一樹のセフレの1人であることを知る。一方抄子は職場で年下の上司・栗山(新納慎也)にも言い寄られる。抄子は気乗りがしないが、栗山は正社員にするからとつきまとう。高校生の娘は母親の変化を感じ取り、からかう。
抄子の表情がいい。職場の顔、娘と話す時の楽しそうな様子、華江と会う気楽な時、一樹のことを考え、そしてセックスをする時。みんな違うがそれが全体としてつながって極めて自然に見える。前篇の終盤に一樹の父親(河瀬陽太)との秘密が浮かび上がり、一樹がセフレ以外を求めない理由が明らかになる。これはすこし作り込み過ぎか。すぐに続きを見たくなった。
後篇では17歳の家出少女・咲(高石あかり)が現れてこれまた話を複雑にするが、抄子はいったん一樹から離れる。その一方で彼女は職場のトラブルをきっかけに23歳のボクサー・猛(石橋侑大)と知り合い、猛は妙子を好きになる。この猛の存在が抜群にいい。ボクシングのシーンも盛り上がる。彼と抄子の関係が何とも微妙だし、そこに一樹や咲までからんできて、最後の最後まで楽しませてくれた。
見終わると、やはり主人公の抄子の動きや表情や言葉の一つ一つが残る。「幸せかどうか、わかりません。でも不幸ではないんです」「セフレだって忘れてた」。特にセックスの場面は、ちょっとした体の動かし方や位置、表情や声も含めてすべてを表していると言っていい。
こんなに女性を性的な視点から自然に捉えた映画は、これまでになかったのではないか。原作は読んでいないが、城定監督が脚本、編集も兼ねているので、すべては女性漫画家が描く30代女性をそのまま巧みに城定ワールドに移し替えた彼の力業だろう。
見終わって、クレジットに寺島まゆみがあったのに驚く。1980年代前半、私が大学生だった頃の日活ロマンポルノの人気女優だ。思い返すと、あの場面に出ていたとわかっておかしくなった。その相手役の俳優も含めて。さらに抄子を演じた行平あい佳について調べてたら、寺島まゆみの娘だったことを知ってもう一度驚いた。さすが伝統ある日活の製作である。
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