千葉真一と深作欣二の「ファンキーハット」シリーズを見る
千葉真一が深作欣二監督を尊敬していたのは知られているが、深作欣二の監督デビュー作に千葉真一が主演をしていたと知っていつか見たいと思っていた。国立映画アーカイブの「逝ける映画人を偲んで 2021-2022」の千葉真一追悼で2本が上映されるのをふと見つけて、見に行った。
監督デビュー作は1961年の『風来坊探偵』シリーズの2本で主演は千葉真一。今回見たのは同じ年その次に千葉主演で作られた『ファンキーハットの快男児』と『ファンキーハットの快男児 二千万円の腕』の2本。長さは53分と52分で、まさに「プログラム・ピクチャー」の代表格。
そもそもこの映画の製作は「ニュー東映」で、映画が絶好調な時代に東映が作ってすぐにつぶれた会社である。映画もまさに勢いで作られたような感じで、裸に派手なジャケットを着て帽子をかぶる千葉真一が、何も考えずに突っ走る姿を見ているだけで楽しい。彼の名前は「天下一郎」で、父親の経営する探偵事務所で働きながら車のセールスもしている(だからいつも外車に乗っている)。
しかし2作とも物語はかなり複雑に作られているうえ、実に世相を反映している。第一作で千葉が好きになるみどり(中原ひとみ)は株に夢中で、ゼネコンに投資している。そこに霞が関の局長の小暮(加藤嘉)の小学生の息子が誘拐されて、身代金を要求された。それを仕切っていたのは実は小暮の秘書・白石(波島進)だった。
小暮は産業会館を日の丸建設に発注しようとして賄賂を受け取り、白石はそれを横取りしようと自分の愛人と組んで息子の誘拐をたくらんだのだった。みどりは株を買うために落札情報を知ろうとして巻き込まれるが、天下一郎は白石の陰謀と小暮の賄賂まで突き止めて、彼の探偵事務所は大手柄となる。
2作目は1作目よりパワーは落ちるが、今度はドラフト制導入前の高校野球の人気選手とスカウトたちの暗躍をテーマに、それを追いかける女性記者美矢子(中原ひとみ)を交えてコミカルに描く。選手の後援会の黒谷会長を演じるのは前作で賄賂を出す日の丸建設社長を演じた神田隆で、千葉真一の相棒役の近藤茂もそのままで、同じメンバーで慌てて別作品を作った感じ。
後半に舞台となる選手の故郷は「軍艦島」と出てくるが、調べてみると長崎のものではなく横須賀の無人島、猿島らしい。軍事基地の跡が残っていて、ここではその後多くの映画が撮られたようだ。
さて、第一作の公開が8月5日で二作目が9月13日。真夏にすさまじい早さで作ったのだろう。深作欣二と千葉真一の始まりが、日本映画黄金時代の終りの始まりのような映画だったとは。
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