『ザ・クリエイター/創造者』に考えるAI
急にAIが身近なものになってきた。先日、依頼された文章を書くうちにフランス映画史の誰も知らないような細部について調べる必要があり、チャットGPTに仏語で書き込んだら、かなり役立つ説明が出てきた。たぶん日進月歩なのではないか。
たぶん数年後には、AIは真面目に頼れる装置になるかもしれない。ましてや50年たてば(もう私はいないが)、どうなっているだろうかと思う。ディズニーの宣伝担当から、10月20日公開の『ザ・クリエイター/創造者』の試写に誘われたのは、そんな私の心を見透かされたのかもしれない。
監督は『GODZILLA ゴジラ』(2014)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のギャレス・エドワーズというのも期待が持てた。『GODZILLA ゴジラ』では、「ジャンジラ」という意味不明の原発名は別にすれば日本の撮影もそれなりに愛があったし、渡辺謙もかっこよかったし。
さて今回の舞台は2065年。10年前にAIが暴発してロスで核爆発が起き、100万人が亡くなるという大惨事があった。そこは「グラウンド・ゼロ」として生々しく後を残している。特殊部隊のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)はアジア系の妻、マヤ(ジェンマ・チャン)と幸せな日々を送っていたが、ある時何者かが襲ってきてマヤは行方不明になった。
それから5年後、ジョシュアは生きているマヤに会えるからと再び特殊部隊へ誘われる。行き先は「ニューアジア」で、人類を滅ぼす兵器を生み出した創造者=クリエイター、つまりAIを殺戮することだった。「ニュー・アジア」は渋谷の風景もあって『ブレードランナー』みたいだが、大半は深い森と海が織りなす自然そのもの。
そこにはAIと人間が合体して頭の半分に機会が埋め込まれた人々が活躍している。渡辺謙演じるハルンもその一人で、彼だけが日本語を話すが周りは理解してタイ語などを話す。ジョシュアはそこでアルフィーという娘に出会い、彼女も半分AIだがなぜか親近感を感じてしまう。
結局のところアメリカの特殊部隊が最新兵器で次々とニューアジアを攻撃するが、敵は簡単には負けない。ジョシュアはアルフィーと手を結んで独自の道を歩む。
結局AIをうまく取り入れた「ニューアジア」を、AIを否定するアメリカが攻撃するがなかなかうまくいかないという物語で、そのアジアの風景もあいまってベトナム戦争のように見えてしまう。この映画がどこか『地獄の黙示録』を思わせるのも、そういう西洋の反省が感じられるからか。
最後のクレジットのメイン部分には、英語と同時にすべて日本語が入る。「監督」とか「ギャレス・エドワーズ」とか。これほど反理性主義とアジア及び日本への圧倒的なシンパシーを表明した映画はアメリカでどう受け止められるのだろうか。
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