東京国際映画祭から「降りる」:その(3)
山形のドキュメンタリー映画祭もそうだったが、今年は東京国際映画祭でコンペを見ても、いま一つ心に響かない。『ゴンドラ』も『野獣のゴスペル』も見て損をしたというものではないが、国際映画祭のコンペかと思うとどうだろうか。さらに2本見たが、その感じは続いた。
イランのパルヴィズ・シャーバズィ監督『ロクサナ』は、魅力的な女性ロクサナと出会った青年フレードがいろいろな事件に巻き込まれてゆくさまを描く。ロクサナは結婚式のビデオや写真を撮る会社を起こしたばかりだが、車の窓ガラスが割られて結婚式の動画のデータを入れたバッグが盗まれる。
泣いているロクサナを助けたフレードは窓ガラスの修理の手配をするうちに、彼女の仕事を手伝うことに。ところが撮影はトラブル続きでフレードは彼女の代わりに警察に行く。そのうえ、彼の母親は認知症で、本人はギャンブルに通って危ない目にあう。さらにわかってきたのは、ロクサナの会社が借金だらけだったこと。
現代のイランの若者たちの危うい姿を皮肉を交えたユーモアで描いてゆくそれなりに魅力のある作品だが、特に惹かれるということはない。次のイラン系フランス人のザーラ・アミール・エブラヒミとイスラエル出身のガイ・ナッティヴの共同監督『タタミ』は、国際柔道女性選手権でのイラン選手の苦闘を描く。
レイラは夫や息子を置いて、コーチのマルヤムと共にジョージアのタビリシに来ており、順調に勝ち進むがマルヤムにはイラン柔道連盟から棄権するよう指令が来る。このまま進んでイスラエルの選手と決勝で戦うのはまずいと言うのだ。レイラに伝えるが応じない。レイラやマルヤムには両親が拘束された連絡が来て、現地のイランの外交官も脅す。
レイラはあくまで棄権をせずに試合を続け、最後はマルヤムも支持する。2人は試合後に拘束されそうになるが、国際柔道連盟がそれを阻止する。全編白黒でサスペンスたっぷりだが、政治的インパクトを除くと撮影も編集もごく普通で映像的な魅力は感じられない。『野獣のゴスペル』もそうだったが、この2本もジャンル映画のようなB級感覚がウリか。
関係ないが、この映画祭のポスターはいつもながらダサい。さらに一般向け上映でも映画祭の前付け映像がない。「東京国際映画祭公式上映」の文字のみ。カンヌもベネチアも山形さえもあるのだから、これくらい作って欲しい。全体にこの映画祭にはデザイン性が欠けている気がする。日本人は得意分野のはずだが。
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