『首』はおもしろいか
北野武監督の『首』を見た。彼は2017年の『アウトレイジ 最終章』の後にオフィス北野を離れて独立して以来、映画を撮っていない。もう76歳だし、オフィス北野の森社長のようなプロデューサーがいなくては監督は無理かなと思っていた。
角川が製作したがその後揉めているという話を聞いたのは去年の今頃か。ひょっとするとお蔵入りかとも思ったが、カンヌに出た。コンペではないので少し落ちるのかと思ったが、とりあえず6年ぶりなので見たいと思った。
結果は、おもしろかったけどやはり往年の傑作には及ばないといったところ。そもそも彼の頂点は『ソナチネ』(1993)や『HANA-BI』(1998)だと思うので、それ以降はだいたい「少し失望」か「少しいい」が続いていた。『座頭市』(2003)で少し盛り返し、『アウトレイジ』三部作もなかなかよかった。
今回は『龍三と七人の子分たち』(2015)に似て、たけし演じる老人が周囲の男たちとふざけるパターン。時代劇だから『座頭市』のような緊張感があるかと思ったが、かなり本格的な戦闘シーンはあっても結局はたけし演じる豊臣秀吉の老人の冗談のネタにしかならない。この齟齬がもったいないと思った。
続々と出てくる男優たちはすばらしい。まず何といっても織田信長役の加瀬亮の狂いぶりが抜群だ。名古屋弁でやりたい放題の言動は見ていて実に気持ちいい。それをクールにかわす明智光秀役の西島秀俊もおみごと。彼は信長を狙った村重(遠藤憲一)をかくまう。なぜならかつて2人は愛しあっていたから。
さらに信長は村重や光秀とも過去に関係があったようだからおかしい。ただしこの同性愛はあくまで冗談レベル。秀吉は弟(大森南朋)や黒田官兵衛(浅野忠信)を従えて、光秀を信長に向かわせようと冗談のように画策する。家康(小林薫)は替え玉を使いながら、のらりくらりと逃げ回る。
そこに中村獅童や寺島進、木村祐一が重要な脇役で登場し、さらに中村育ニ、六平直正、荒川良々、大竹まこと、津田寛治などが小さな役でもピリリと締める。日本の男優をこれほど巧みに仕える監督はいないのではと感心した。
それにしても何だかお金の無駄使いのような、壮大な遊びにも見えた。やはりプロデューサー不在なのだろうか。
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