『ナポレオン』を見る
リドリー・スコット監督の『ナポレオン』を劇場で見た。ナポレオンはフランス人だが、この映画ではフランス人の話す言葉はすべて英語で通している。少しだが、ドイツ人はドイツ語をロシア人はロシア語を話すのに。フランスの友人たちの評判は極めて悪い。「あれは真実ではない」と。
そこで興味が湧いて見に行った。フランスではアベル・ガンス監督のサイレントの金字塔『ナポレオン』(1927)がある。これは80年代にコッポラのお父さんの指揮するオーケストラ付きで日本でも上映されたが、行っていない。その後出たDVDは見たが。
ナポレオンは、フランスでは日本の織田信長か豊臣秀吉くらいに有名かもしれない。しかし私はナポレオンについてはほとん史実を知らない。コルシカ島生まれで皇帝になり、失脚してエルバ島に流されて復帰し、最後はセント・ヘレナ島に流されたくらいしか知識がない。
だからこの映画では、そのあたりを勉強できるかくらいの気分で出かけた。ところが映画を見ても、なぜナポレオンが欧州を支配するほど力を持ったのかはおよそ理解できなかった。トゥーロンという港町から英国軍を追い出すというのが最初の勝利なのだが、なぜ彼がその役に任命されたのかもどうして勝てたのかもよくわからない。
見ごたえがあったのは大きな戦争の戦闘シーン。アウステルリッツの戦いでは、ロシア・オーストリア連合軍を氷上に追い込み、氷を爆破して敵が馬もろとも次々とおぼれ死ぬシーンはスローモーションですさまじかった。逆にワーテルローの戦いでは、英国・プロシア軍の守りを壊せずに大勢の兵士が死んでゆく。
見た感じでも何千人という兵士が死んでゆくが、それらは何かしら作り物のようだし個人ではなく全体として死が描かれるので、悲しいとも思わない。昨今は戦争がリアルになってきているので、あえて「見世物」として楽しめる戦争にしたのかも。
結局のところ、コルシカ島生まれの男がどのような経緯で皇帝になれたのか、そして欧州を支配できたのか、映画を見ても私にはわからなかった。単に戦闘に強いからとしか思えなかった。それからナポレオンを演じたホアキン・フェニックスはなかなかよかったが、最初の頃はどうしても20代には見えなかった。
やはり映画で何かを学ぼうというのは間違っているかもしれない。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 少しだけ東京国際:その(5)(2024.11.06)
- 少しだけ東京国際:その(4)(2024.11.05)
- 少しだけ東京国際:その(3)(2024.11.04)
- 少しだけ東京国際:その(2)(2024.11.03)
- 少しだけ東京国際:その(1)(2024.10.30)
コメント