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2023年12月 6日 (水)

90年代の邦画2本

8日(金)まで開催している私の学生企画の映画祭「移民とわたしたち」で、90年代の日本映画を2本見た。岩井俊二監督の『スワロウテイル』(1996)と崔洋一監督の『月はどっちに出ている』(1993)で、『スワロウテイル』は実は初めて。

この2本は基本的な発想が似ている。『スワロウテイル』は近未来の設定だが、日本に住む中国人を中心にした外国人たちの物語であり、『月はどっちに出ている』では在日コリアンを中心にフィリピン人なども絡んでくる。

どちらもカリカチュアというか、ある種ありえないファンタジーの部分がある。もちろん『月はどっちに出ている』は在日コリアンという長い歴史のある人々の物語なので結婚式で韓国派と北朝鮮派が揉めるシーンなど、ずっとリアリティが強い。『スワロウテイル』は近未来だし、ある種の想像の中国人像だ。

ポイントは両方の映画でコリアンや中国人を演じているのが、日本の俳優だということ。コリアンの場合は長年住んで日本語が完璧な人が多いので違和感はないが、中国人が英語だけを話したり、日本語と英語しかできない中国人がいたりして、それも現実の一部だが違和感もある。

どちらにも共通するのが、大阪弁を完璧に話す外国人がいてそれが繰り返し笑いを誘う大きなネタになっていること。『スワロウテイル』のバンドの一人は白人だが、日本生まれで英語はできず、関西弁を話す。『月はどっちに出ている』では主役の1人、フィリピン人のコニー(ルビー・モレノ)が大阪弁を話す。

今ではこんなことは日常なので、あまりおかしくないが、まだ1990年代半ば頃は日本語が完璧なガイジンというだけでおもしろかった。彼らがどんどん増えて行くことが「国際化」としてありがたがられると同時に不安も生まれたと思う。その不安を突き詰めてある種の想像上の喜劇にしてしまったのがこの2本ではないか。

『月はどっちに出ている』はキネマ旬報1位で単館系としては東京が26週という異例のロングランとなった。『スワロウテイル』は興収が10億円を超したはず。ある意味でこんなダラダラ続く映画がヒットしたのは、当時の日本人がこわごわ「国際化」を迎えた時代の雰囲気だろう。

岩井俊二は中国や韓国での人気が高いのは留学生からよく聞くが、例えば今の中国人は『スワロウテイル』で日本人が演じる近未来の中国人群像はおかしく見えないのだろうか。今度聞いてみよう。とにかく私にはずいぶん奇妙な2本だった。

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