変わる大学
国立大学法人法が改正されようとしている。東大などの一流校に「運営方針会議」の設置を義務付けるもので、大学教員などが反対している。私も署名が回ってきたのでサインした。さて「運営方針会議」とは何なのか。
「運営方針会議」は学長と外部の有識者3名以上で構成され、中期目標、予算の決定、学長選挙などに意見を述べることができるという。そしてその委員の選定には文科相の承認が必要だ。つまり政治家に都合のいい財界人などを送り込むことが容易になる。
もともと10兆円規模の大学ファンドから支援を受けることが決まった東北大に加えて、今後予定されている東大、京大、阪大、名古屋大も対象となるばかりか、国立大学すべてに適用される予定という。
この会議を提案したのは政府の「総合科学技術・イノベーション会議」という。首相を座長に閣僚と財界と理系の大学教員14名で、メンツを見る限り、文系を潰そうという感じがアリアリだ。そこから出た案は「運営方針会議」のメンバー過半数は学外者として学長選挙も担うものだったが、法案では少し和らいだ。
これが承認されて国立大学全部に広まれば、国立大学はいよいよ政府の言う通りになり、文学部などは10年以内になくなるのではないか。この会議は私立大学にも広がるに違いない。フランス語やドイツ語やイタリア語は全く教えなくなるだろう。文学や哲学や歴史や芸術は「趣味でやれ」と言われそうだ。
そもそも今世紀に入ってからの文科省の大学改革はすべて悪い方に行ったのではないか。大学に配っていた大幅に補助金を減らして、申請ベースにした。これでどこの大学の教員も申請書を書くのに膨大な時間とエネルギーが必要になった。若い教員はその助成金で雇用することが多く、数年経つと解雇されるようになった。
大学の教員はヒマそうに見えるのか、授業の回数を増やすことが義務付けられた。年30回を確保するために、休日に授業をすることが増えた。この10年ほど前から年に授業を4、5回増やしたが、それで学生が優秀になったという話はついぞ聞かない。大学は自分で学ぶための余裕のある時間が必要なのに。
教員は研究の時間がなくなり、結局授業の質は落ちる。これがどうしてわからないのだろうか。
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