麻布台ヒルズに壊れゆく東京を見た
もともと私は森ビルとは相性が悪い。アークヒルズはどこかペカペカで底の浅い感じがしたし、六本木ヒルズは成金趣味でどこにも居場所がない。表参道ヒルズは安藤忠雄建築の低層ビルだからマシだが、中に入ると安藤建築特有の不吉な感じが澱んでいる。
もう金輪際「ヒルズ」と名のつくところには行くまいと思っていたが、麻布台ヒルズに行ってしまった。昨年11月末にオープンしたが映画館もないので全く関心がなかった。ところが地下鉄のタイアップ広告でオラファー・エリアソン展をやっていると知って、急に関心が湧いた。
オープンして2カ月たつので混雑は収まったかと、平日夕方に出かけた。ギャラリーは神谷町駅から直通の出口があると書かれているが、まずそこを出て迷う。1階に出て外を歩いたり、2階に行ったりと迷ったがようやく半地下のような場所に入口を見つけた。
会場に入るとまずミラーボールのような作品があった。これは序の口で、次にぐるぐる回る機械の先に鉛筆が付いていて、触れると加えるとその力や方向に従って図を描くという仕組み。これを自分でやってできた図を持ち帰ることができるのは別料金だが、予約で一杯で見るだけに。まわりにはその仕組みで描かれた絵が貼られていた。
次は真っ暗な空間で上から数カ所に水が降って来てそれが光り輝くというもの。これぞオラファー・エリアソンらしい視覚の魔術で、座って見ていると心地よい幻覚を覚える。だんだんいい気分になってきたと思って次の部屋に行くと、ビデオでエリアソンの対談が流れていて、なんとこれでおしまい!
東京都現代美術館のすばらしい展覧会の10分の1もない。たぶん300平米くらい。これで1800円を取るとは、スキャンダルに近いのではないか。わざわざ神谷町まで来たので、エリアソンの恒久展示もあるという「プラザ」まで歩いた。途中にはエルメスだのカルティエだのの店がまだ開店してないで、巨大な広告だけが賑やかしのように並んでいる。
この空虚さは飲食店の入る「プラザ」も変わらない。馬鹿高い高級店と、どこも列だらけのカフェ。外には超高級マンションが立ち並び、インターナショナル・スクールもあるとか。帰りは六本木一丁目駅の矢印があったので、その方向に歩いた。左右には高層マンションがいくつも建設中で、その光景に文字通り寒々とした。
東京の数パーセントの富裕層や成金外国人がいるから経済的にはこれらの工事が成り立つのだろうが、かつての飯倉あたりの街並みはすべて消え去った。東京は壊れつつあると思った。せめて私が生きている間は、自分の住む界隈までこうならないことを祈る。
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