「チネマ・リトロバート」何か:その(4)オルミ
エルマンノ・オルミの初長編『時は止まりぬ』(1958)を見た。DVDはイタリアでも出ていないので、『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』を書いた時はユーチューブでは見た。本には「これは冬のダムの管理事務所で働く中年と若い学生をドキュメンタリー風に追ったもので、随所にユーモアと詩情が込められている」と書いた。
スクリーンで復元版を見て思ったのは、幸いにして間違っていないが、ちょっと足りない。映画のクライマックスとなる嵐の夜に、中年の男と学生が過ごす聖なる時間に触れてない。もちろんあの新書では800本の映画を扱っているのですべてをきちんと見て書くことは無理だったけれど、古いイタリア映画を見るたびにどうしても自著をチェックしてしまう。
物語は実にシンプルで、ダムの管理事務所で2人の中年が働いているが、うち1人が妻の出産で休みを取り、代わりに採用された学生ロベルトはベテランのナターレと一夜を過ごすというもの。ナターレは黙々とポレンタを作るが、ロベルトはいろいろ話しながら食べる。ナターレはワインが好きだが、ロベルトは飲めない。
外では強い風の音が鳴り響いている。ある時「ドサッ」という音がしたので熊でも来たのかと思ったら、雪で事務所の壁に少し穴が開いていた。そこからものすごい風が入ってくるので、ナターレは少し下にある教会で寝ようと提案する。2人は布団を持って豪雪の中を移動するが、ロベルトは枕を落としてしまう。
ようやく教会に移動して2人は寝場所を見つけるが、ロベルトは寒いと震え出す。ナターレは事務所に戻って牛乳を温め、それにグラッパをしこたま入れて飲ませる。ロベルトは「ちょっと強い、何を入れたんだ」と聞くがナターレは応えない。ロベルトが寝入るとナターレは教会の電気を消して、祭壇の蝋燭数個に火をつける(このシーンは何とも神々しい)。
そして翌朝実にいい天気になり、光が輝く雪道を2人は事務所に戻る。いつの間にか2人は親子のように仲良くなっている。2人のシンプルな心の触れあいにどこか聖なるものが宿ってくる。この普通の人々の日々を描きながらそこに宗教的な何かが降りてくる感じは、オルミの映画に最後まで貫かれていると思った。
1931年生まれのオルミはゴダールらのフランスのヌーヴェル・ヴァーグと同じ世代だが、同じ頃にこんなに地味な作品でデビューしていたとは。
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