国際女性デーに考える
昨日、朝起きて「朝日」を読んでいたら、1面トップが「単身の高齢女性 4割貧困」で、その下には「20代から男女賃金差」。天声人語には世界初の女性監督、アリス・ギイ。そしてその下の書籍広告は『ジェンダー事典』などすべて女性関連。
一瞬、何が起こったのかと思ったら、「国際女性デー」と書いてあった。トップ記事を読むと、65歳以上の単身者だと女性の貧困率は44%で男性は30%というから、ずいぶん違う。記事によれば貧困率とは1人当たりの可処分所得の中央値の半分以下の人々の割合を指し、2021年だと税金や社会保険料などを引いて使えるお金が年に127万円以下の所得という。
家賃や電気代も含めて月に使えるお金が10万円以下の人が、65歳以上の単身女性の半分近くいるというのは驚きだ。こうなると映画を見るどころではない。コロナ禍以降、映画館から高齢者が減ったというが、こんなところに原因があるのかも。
「国際女性デー」で私が考えたのは、ハリウッド映画界から始まった#MeTooを契機としたキャンセル・カルチャーのこと。前にここに書いたように、フランスでは去年から今年にかけてフィリップ・ガレル、ジャック・ドワイヨン、ブノワ・ジャコーなどが女優から突き上げられているが、同じポスト・ヌーヴェル・ヴァーグ世代のアンドレ・テシネも最近告発された。
その中心にいるのがジュディット・ゴドレーシュ。セザール賞の授賞式でも派手な演説をやっていた。彼女は批評家に対して、今まで評価したこれらの監督の映画をもう一度見てみなさい、とけしかける。私は彼女が17歳で主演したジャコー監督『デザンシャンテ』(1990)を最近見たが、私には秀作に思えたし、ここに性的な問題があることも見えなかった。
韓国のキム・ギドク監督の映画祭が2年ほど前に企画されて、抗議の嵐で中止になったことがあった。私は上映はしてみんなで議論すればいいじゃないかと思ったが、ギドクの場合はセクハラぶりが尋常ではなかったようだ。さらに彼の作品の中身自体がセクハラを思わせることがある。こうなると難しい。
最近、あるアート系映画館で主演俳優が性加害に加担した疑いのある映画を上映しようとして、中止に追い込まれた。これはちょっとやり過ぎかなと思った。キム・ギドクとは犯罪の濃度が違う。私はその映画に関わった数多くの人々のことを考えた。
そういえば、最近、私の知り合いの大学教員が、2人セクハラで辞めさせられた。それなりに理由はあるようだが、逮捕されたわけでも有罪になったわけでもない。自分自身がそんなに善人とは思わないし、過去のことを考えたら自分に起きてもおかしくないと思うので、あまり責める気になれない。
SNSで盛り上がる正義感によるキャンセル・カルチャーの行き過ぎはどうも気になる。
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