『青春ジャック』がおもしろかった
井上淳一監督『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』を劇場で見た。見ながら真ん中あたりから私が笑いだしたらそれが劇場に広がり、その声がどんどん大きくなっておかしかった。何がそんなにおもしろかったのか。間違いないのは、描かれたのが1980年代前半だから。
それはまさに私の学生時代だった。正確に言えば主人公の井上は1982年の時点で浪人生なので私の方が少し上だが。舞台は名古屋の実在するミニシアター「シネマ・スコーレ」で、監督の若松孝二が作った映画館として有名だ。
物語は、若松(井浦新)が木全(東出昌大)にそこの支配人を依頼するところから始まる。つまりはすべて実名で大筋は実際にあった物語のようだ。冒頭で木全が「なぜ若松さん、名古屋に?」と聞くがそれは私も昔から思っていた。「東京も大阪も土地が高い」「オレの映画を上映するため」。つまり名古屋には自分の映画を上映する館がなかったから。
これでわかるように、若松は万事自分勝手でいいかげん。それでも人懐っこく、憎めないキャラを井浦新がうまく演じる。最初はやり過ぎだと思ったが、だんだん本人に似ているように見えてくる。私は若松監督にはベネチア国際映画祭で取材したほかは、学生主催の映画祭で2時間ほど話しただけなのに。
それでも井浦新の感じは、そのものに見えた。さらに支配人の木全さんが東出昌大とは違うただのオッサンなのに、ちょっと猫背でいつも安定感があるけど言うべき時は言う感じが本物にそっくり。木全さんは遠くから何度か見ただけで面識はないにもかかわらず。
若松は金のためにピンク映画をやれと言う。木全は月に1週間だけアート系をやると言い張り、若松は任せる。そこに現れるのが浪人生の井上(杉田雷麟)。井上淳一監督自身である。彼は若松の『水のないプール』(1982)に感動し、若松プロに入れてくれとそのまま若松が乗る東京行きの新幹線に一緒に乗ってしまう。
シネマスコーレでバイトをする監督志望の女子大生、金本(芋生悠)はそれをまぶし気に見る。彼女は在日コリアンでもあった。この辺りは少し込み入り過ぎだが、東京に行った井上が若松から怒鳴られるシーンが抜群におかしい。名古屋の河合塾の依頼で予備校の映画を撮ることになり、若松は大学生になったばかりの井上に監督を命じるが、現場はいつの間にか若松が仕切っている。
見ていて本当におかしい。黒沢清の『神田川淫乱戦争』とか周防正行の『兄貴の嫁さん』とか当時の「必見」の映画が続々と出てきて、懐かしいことこのうえない。あっと言う間に終わってしまった。最後の記録映像にはホロリ。
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