清水宏ふたたび:その(2)
今回清水宏を何本か見て、一番驚いたのは『明日は日本晴れ』(1948年)。これは最近になって見つかった映画で、見ていなかった。戦前の傑作『有りがたうさん』(1936)の続編と言われているが、確かに田舎のバスの運転手が主人公で乗客と繰り広げるてんやわんやで話が進む。
ところが見てみると、もう1本の傑作、『按摩と女』(1938)の続編でもあることがわかる。この作品の2人の按摩の1人を演じた日守新一が『明日は日本晴れ』でも盲目の按摩・福市として出てくるからだ。彼は例によってバスの中に何人いるかを当てて、女性が通ると「あれは都会の匂いです」と言う。
このバスは『有りがたうさん』のように山の中を走るが、オンボロで途中で止まってしまうところが違う。修理しても動かないと、バスを降りて歩き出す者が出てくる。反対側に行くトラックが通ると、荷台に乗る者もいる。
中盤で「隊長さんですか」と声がする。「やっぱりあんただ。あんたのせいで足がビッコになった」と老人を責める男。老人は「気のすむように言ってください」と言い、一人で歩き出す。さらには戦争孤児の浮浪児まで歩いている。やはり戦争の影は色濃い。一方で通りがかったバスでは若い男女が騒いでいる。アコーディオンに合わせて踊る。
運転手の清さんは、サングラスをかけた都会の女が気になっている。かつて彼を捨てて都会にいったワカさんだった。清さんは「お互いに苦労し過ぎた。戦争が何もかも滅茶苦茶にした」と語る。実は車掌の女は清さんが好きで、ワカさんのことを気にしている。
盲目の福市は、口がきけず耳が聞こえない老人に近づく。車掌の女が老人の動作で言いたいことを悟り、福市に話す。三人の会話ははずんで笑いが漏れる。いやはや『有りがたうさん』の能天気が明るさに戦後の暗さを加えながらも、どこか楽天的な映画だった。
今のソウルを撮ったドキュメンタリー『京城』(1940)を見たのは3度目。今回思ったのはロシアの『カメラを持った男』やドイツの『伯林大都会交響曲』との類似性。朝、鐘が鳴って列車が着き、女学生が校門をくぐるシーンに始まり、夜の街で鮨屋や天ぷら屋や料亭で楽しむ日本人で終わる。
おもしろいのは、露店で買って立ち食いをしたり、頭の上に野菜を乗せて歩いたりする朝鮮人と同時に、フランス料理店らしき店でナイフを使ったり、朝鮮人の踊りを見ながら酒を飲んだりする日本人を交互に見せていること。市場も貧民街も日本人街も自然に見せる。何も言わずに帝国主義とは何かを見せている。
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