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2024年5月 6日 (月)

『ザイム真理教』は正しいか

森永卓郎著『ザイム真理教』を読んだ。この著者はかつてはよくテレビで見ていたが、最近はテレビを見ないのでわからない。その時の彼の発言は極めて真っ当な気がしていた。最近、末期がんとのことで、その写真もネットで見た。

彼が死ぬ前に出したかった本と言うのがこの『ザイム真理教』で、広告で多くの出版社に断られたことも書かれていた。そこで近所の「文悠書店」でラジオ中国語のテキストを買った時についでに買ってみた。

一言で言うと前半は必ずしも同意しないが、後半は全くその通りだと思った。出だしは彼が東大経済学部を卒業して日本専売公社(いまのJT)に就職した時の話。彼は半年間の研修の後、管理調査本部主計課に配属された。「大蔵省から予算を獲得し、それを支社や工場に分配する部署だ」。これは東大卒ゆえのエリートコースだろう。

すると大蔵省主計局と専売公社主計課の間に「隷属関係」があった。ここには詳細にその様子が書かれてるが、ほぼ同じ話を私は最初の職場である政府特殊法人の先輩からよく聞いた。予算獲得のために夜中に大蔵省に行って、呼び出しを廊下で待つ話だ。とにかくあらゆる役所にとって大蔵省主計局は神様だった。

ここから話が急に変わって、大蔵官僚がほとんど東大法学部卒のために、「財政均衡、すなわち税収の範囲内に歳出を収めるという経済学的にはありえない話を「正しい」と思い込んでしまったのだ」となる。経済学には「信用創造」があり、「自国通貨を持っている国は、財政均衡に縛られずに、より柔軟な財政政策をとることができる。財政赤字はある程度拡大させ続けて大丈夫なのだ」

つまり今のまま税収を上回る歳出をしてかまわない、国債を発行すればいいのだから、というのが彼の考え。増税、とりわけ消費税引き上げは庶民を直撃するのでとんでもないという。これに対して財務省が布教する「ザイム真理教」は、財政赤字を放置すれば将来世代に負担を先送りするから、高齢化で社会福祉費が増える一方の現在は消費税を引き上げて財源を確保すべし、となる。

2020年の国債の残高は987兆円で借入金や未払金を足すと1661兆円。ところが国の資産は現金や有価証券などの流動資産が1121兆円。だから借金は540兆円で、同年の日本のGDPは527兆円だから102%でしかないから先進国では普通だ、というのが森永氏の論理。「こんなに政府資産を持っている国は日本以外に存在しない」

私はどうしてもこの理論に同意できない。1980年代からヨーロッパで消費税(付加価値税)を見ていたので、社会福祉のレベルを上げるためには日本でも導入すべきだと思っていた。それによくわからない公共事業の道路や防衛費などを減らせば財政均衡は可能だと。やはり政府の国債頼りは政治家や役人の感覚を麻痺させる気がする。

これが前半で、後半は公務員や富裕層がいかに得をする制度になっているかという話で、こちらはびっくりしたし納得した。これについては後日書く(かも)。

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