イタリア映画祭にも行かないと:その(2)
イタリア映画祭では結局3本しか見なかった。既に書いた『僕はキャプテン』のほか『ルボ』と『グローリア!』。『ルボ』は『やがて来たる者へ』(2009)が日本でも劇場公開されている、ジョルジョ・ディリッティ監督の新作だが、ちょうど3時間で見応えたっぷりで、上映後は拍手もあった。
1939年、ルボはスイスの大道芸人家族を率いているが、徴兵されている間に3人の子供が憲兵隊に拘束され、妻は抵抗して殺されたという。ルボは移動型民族イェニッシュに属し、スイス政府はその子供たちを家族から引き離して「再教育」を命じていた。
兵役を終えたルボは3人の子供を探すために、ありとあらゆる手段を用いる。怪しげなユダヤ人宝石商ライターを殺して成り代わり、宝石を手に入れてチューリッヒで上流階級に入り込む。彼らは「再教育」を担当する「若者のための財団」に寄付をする者が多かった。
おもしろいのはいかにもジプシー風のルボ(フランツ・ロゴフスキ)が立派な背広を着て髪を整えると、上流階級夫人にモテモテの存在になること。何とか「再教育」のリストを入手しようとするが、見つけた子供の1人フィリップは名前を変えており、父親を見ると逃げた。
それから12年後、ロボはイタリア国境の小さな町、ベリンツォーナのホテルにいた。そこのホテルの部屋係のイタリア人女性マルゲリータと恋に落ち、彼女は子供も身ごもって将来一緒に住む予定だった。ところがイタリアに家を買いに行った帰りに税関で拘束され、身分詐称で逮捕される。刑務所で10年がたち、彼は戻ってくる。
かつてのホテルに行き、マルゲリータが数カ月前に亡くなったことを知る。その連れ子は青年となってスポーツ用品店で勤めていたが、自分の息子には合わせてもらえない。ルボは裁判官に相談し、これまでの人生を語り始める。
ジプシー(ロマ)への差別にナチスのユダヤ人迫害が加わり、それが1960年代にも続いてゆく。そしてルボの執念も。彼を演じたフランツ・ロゴフスキーは『未来を乗り換えた男』に出ていたが、その映画ではナチス・ドイツを逃れてフランスで奇想天外な人生を送る男を演じていた。
マルゲリータ・ヴィカリオ監督の『グローリア!』は、19世紀初頭の女子孤児院を舞台に、下働きをする娘が音楽の才能を発揮し、最後は仲間を率いてローマ法王の前で自由奔放な演奏を聞かせるというもの。いわゆる音楽もので最後は気分が高揚するタイプの映画だが、いささか作り過ぎ。
監督はシンガーソングライターとして有名らしく、いかにも音楽好きが作った娯楽作品という感じ。こういう作品は公開されるかも。
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