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2024年6月 3日 (月)

久しぶりの福岡

久しぶりに福岡に行った。たぶん2020年1月以来ではないだろうか。その前年に母が亡くなって一周忌だったと思う。それからコロナ禍ですべてが停止し、旅行できなくなった。2年ほど東京に居続けて、2年前に学会で京都や大阪に行った。昨年は映画祭のために、新潟と山形。

今回の福岡行きも、また学会だった。2泊することになり、最初はあえて柳川に泊まった。もう30年以上行っていないが、妙に行ってみたくなった。というのはかつての柳川藩主の屋敷である「御花」が旅館として営業していたから。

この料亭はいつもやっているが、昔から旅館はやったり閉じたりしていた。来月からはまた改装のための休業をするとHPで見て、興味が湧いた。私は大学生の頃に友人たちと川下りをして御花の大広間でお茶を飲んだ記憶があった。川下りは客人を連れてそれから2度行ったが、御花には行っていない。

さて旅館はどうかと言えば、結論から言うと行ってよかった。部屋自体はあまり高級ではなかったが、宿泊棟ではない本館や庭を自由に見学できるのがよかった。夜にはお酒が無料で、それを持って本館の2階ベランダに出ることができた。夕食後に初夏の風を感じながら、地元の冷酒を飲むのは快適だった。

御花の庭園もすばらしかったが、それ以上によかったのが御花の周囲の雰囲気だ。川下りのための小舟があちこちに浮き、川の両側には鰻の店が立ち並んでいた。その寂れた感じがたまらない。「川下り船頭さん募集」という看板を見ると、応募しようかと思ってしまう。

行きのタクシー運転手さんに聞くと「若いもんがみんな出てゆくけん、人口は毎年減りよります」。帰りのタクシーで「御花とその周辺はいいですね」と言うと、年輩の運転手は「あそこだけですたい」と苦笑い。それでもあれだけの魅力があれば、観光資源としてはかなりのもの。

翌朝、西鉄大牟田線で福岡へ。柳川駅で並んでなんとか特急で座ることができたが、福岡に近づくにつれてどんどん混んでゆく。これはたぶん50年変わっていない。私は柳川から普通電車に乗り換えて数駅行ったところに住んでいたので、同じ状況を記憶している。ちょうど埼玉や千葉から都心に行く感じか。

太宰天満宮は中国人だらけ。そのおかげか、前より栄えている感じ。隣の九州国立博物館は外国人はほぼいないが、常設展ではアジアとの交流のハブとしての九州を見せようとしているのが明らか。中国、朝鮮半島から南アジア、中東までアジア関係が半分はあった。福岡も中国人が多い。福岡アジア美術館で所蔵品のアジアの現代美術を見たが、ここには中国人や韓国人の観光客もいた。

福岡はいつの間にか、アジアの街になっていた。これは昔は考えられないことだった。

 

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