ホン・サンス『WALK UP』を見る
暑いし時間もないので試写や映画館に行くことをしばらくやめているが、思わず見たくなったのがホン・サンス監督の『WALK UP』。ホン・サンスの映画で脇役として監督や教授の役をやったクォン・ヘヒョが、今度は主役で4階建てのアパートが舞台というので惹かれて劇場に。
彼が演じる映画監督ビョンスは、最初は娘を連れて、インテリア・デザイナーのヘオクの持つ4階建てアパートを訪ねる。美術を専門にする娘がインテリア・デザイナーになりたいと言ったから。最初は地下のヘオクの作業場で3人でワインを飲む。そのアパートは1階と2階がレストランで、3階とテラス付きの4階が住宅のモダンな建築。
時がたち、ビョンスを気に入ったヘオクは次に2階の個室レストランに誘う。女性店主のソニも加わって、大盛り上がりでワインを何本も空ける。ソニはとにかくビョンスの映画が好きらしい。
また時がたつと、ビョンスは3階でソニと一緒に住んでいる。彼女が作った野菜料理をほめているが、飲んでいるのはワインではなさそう。海外から回顧上映の招待が来るが、現在映画を作っていないのでビョンスは躊躇する。かつてソニと行った福岡が楽しかったという話をしながら。
さらに時がたち、彼は4階のテラスで別の女が買ってきた焼き肉をおいしそうに食べる。今度は「肉にはワインより焼酎が合う」といいながら、女とエッチな話もする。なんだかだんだん上に上がるごとに中年男の本音が出てきたか。それから時がたったのかどうか、娘がそのアパートにやってくる。その会話を聞きながら、急にあっと思う。
例によって白黒で食事と酒と会話ばかり。話す内容に脈絡はないが、中年男らしい自慢や自分勝手さがにじむ。カメラが全く動かないで数分がたつと、ある時眠くなってくる。この催眠作用を計算に入れたかのように、映画はファンタジーの世界を垣間見せる。
何度か出てくる階段がある。一つ上にあがるごとに新たな楽しみがあるように見えて、実はそうとも限らない。私には中年男のたたずまいが実におかしかったが、はたして女性にはどう映るだろうか。
主人公の中年男ビョンスもそうだが、出てくる女性たちもそれなりに魅力がある。かといって目立つような美人でもない。日本人と顔が同じこともあって、いかにも身近にいそうな感じの人々ばかり。この日常性もまた、うまさの一つだろう。
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