東博の内藤礼展
炎天下、東京国立博物館の「内藤礼/生まれておいで 生きておいで」を見に行った。彼女の展覧会は、1997年のベネチア・ビエンナーレの日本館で入場制限をしていて入れなかったのが最初だと思う。
それから2014年の東京都庭園美術館で常設展示のあちこちに小さなオブジェを並べていたのが相当によかったし、2018年の水戸芸術館の個展は天井からの自然光を使って不思議な空間を作り出していて、本当に歩くと幸福な気分になった。
今回は東京国立博物館が会場だからかなり期待した。あの19世紀後半にできて関東大震災後に改築された歴史を持つ博物館とどう対峙するのか、場合によっては古美術品も展示の一部になるのかと考えた。
そのうえ、展示は平成館の企画展示室と本館の一部という。あのバカでかい平成館をどう使うのかと思ったが、行ってみると平成館の2階の大きな2つの展示室は使わず、1階の右側の小さな細長い部屋だった。そこは高い天井から無数の透明な玉がぶらさがっていた。高さはいろいろで光と影が目の前でうつろう。椅子に座って見ると何だかいい気分になってくる。
平成館から中を通って本館に進む。その途中に小さな瓶に水を一杯に張った作品があったが、これはあまりピンと来ない。そこで本館の正面奥の「特5」を目指す。ここは「特別5室」と呼ばれる東博の名物展示の場所である。
いわゆる本館の正面奥にあり、かつては1974年の「モナリザ展」でたった一点展示された場所だ。私が記憶しているのは1999年の「日本におけるフランス年」に来たドラクロアの《民衆を率いる自由の女神》』とか、2007年のダ・ヴィンチの《受胎告知》とか、とにかく特別な一点モノの展示に使われてきた。
ここは入場者を制限していたが、5分ほどで入場。この場所が2階まで解放されており、2階の窓から自然光が入って来るのにびっくり。それまでは1階のみの窓のない暗い空間だったから。明るく天井の高い空間に透明な玉が無限にぶら下がり、壁にはデッサンが並ぶ。極めて博物館的な空間ながら、モダンそのものの展示だった。
高い天井の2階までの空間の窓から自然光が入り、透明の玉は相反射して地上にいる観客を惑わせる。100年近くたった建物の呼吸が伝わってくる。その目と耳に迫る感覚に、生きることの基本に立ち戻ったような気分になって驚く。
水戸芸術館の展示ほど刺激的ではなかったが、さすがは内藤礼で行ってよかった。常設展も少し見たが、外国人観光客が多くてびっくり。昔はインテリ風の欧米客が数名という感じだったが、今は世界中の普通の観光客がいてまるでルーヴル美術館のようだ。違いは「モナリザ」のような「目玉」と言われるものがないことではないか。
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