『東京いい店 はやる店』を読みながら
新書の柏原光太郎著『東京いい店 はやる店 バブル前夜からコロナ後まで』を読んだ。書店で見つけて著者が私と同世代で出版社勤務なので、似たような体験をしているだろうと思ったから。私は20年以上会社員をやったが、一応「グルメ」ということになっていた。
それはいくつか理由があって、まず仕事上の接待で学芸員や大学の先生や外国人をいい店に連れていく必要があった。また、よくパリに出張したので、たまには有名な店に行く。そうするとミシュラン星付きの「名店」がどんな料理を出し、どんなサービスをするかを体験した。
またワインが好きで、最初の職場ではよく特売で1ダースを買ってみんなで分けた。5、6人で3、4種類買って、分けて少しづつ自宅に持ち帰った。これを年に何度かやっていると、先輩の知識も学んでだんだんくわしくなっていった。
この本を読むと、著者は文芸春秋で『東京いい店うまい店』の編集長をやっただけあって、私とは格が違うというか、各時代の話題の店に全部行っており、この40年の変遷をよく捉えている。冒頭に、1956年にできた「レンガ屋」、66年の「マキシム・ド・パリ」などが語られる。
1970年に「ロイヤル」と「スカイラーク」ができたことから外食産業がチェーン化した。ビストロとしては1969年の「シェ・フィガロ」に始まって70年代前半までに「シェ・ジャーニー」「イル・ド・フランス」「ビストロ・ド・ラ・シテ」ができた。私は「シェ・ジャーニー」は全く知らない。
80年代の「シェ・イノ」「クイーン・アリス」「コート・ドール」などになると「料理の鉄人」などで知っているし、私も行った。その頃に『東京・味のグランプリ』でデビューしたのが若き山本益弘。彼の文庫版『東京ポケット・グルメ1990-91』が私が最初に買ったグルメ本で、行った店には印を付けている。
そのほか今も持っているのは、1996年の田中康夫『いまどき真っ当な料理店』や1998年の甘糟リリ子『東京のレストラン』など。確かその頃の『東京いい店うまい店』もあったはずだが、見当たらない。さて、山本益弘の本でマークしているのは、以下の通り。
「アピシウス」「アンリ―」「イル・ド・フランス」「オテル・ドゥ・ミクニ」「シェ・イノ」「ジョエル」「パストラル」「ビストロ・サンノー」「ビストロ・ラ・ポスト」「ブラスリー・D」「ブラスリー・ベルナール」「フロ表参道」「ペリニョン」「レザンジュ」「ロオジエ」「アットーレ」「アルポルト」「イル・カステッロ」「ヴィノッキオ」「ヴォーノ・ヴォーノ」「カルミネ」「グラナータ」「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」「ヂーノ」「ラ・スカーラ」「ラ・ラナリータ」「リストランテ山崎」
とりあえず、フランスとイタリア料理まで書いた。中華や和食はあまり行っていないので。さて、今あるのは「アピシウス」「シェ・イノ」「アルポルト」「ロオジエ」くらいだろうか。「アルポルト」以外は料理人も代替わりしたはずだ。
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