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2024年9月18日 (水)

久しぶりに海外へ:その(6)

今回の旅行で気づいたことをいくつか書き留めておきたい。考えてみたら、これまでパリに行くと必ず会うのは評論家のジャン・ドゥーシェさんと女優のフランソワーズ・アルヌールさんだったが、もうこの世にいない。お二人とも2019年9月には会ったのに、ドゥーシェさんはその11月に、アルヌールさんは2021年7月に亡くなった。

もともと9月にパリに行っていたのはベネチア国際映画祭の帰りだったが、今回はそれもない。つまりある意味で目的のない旅になってしまった。イスタンブールという初めての土地を加えたのは、そのため。

それでもパリで1人で食事をするのは寂しいので、何人かの友人にあった。日本人もいればフランス人もいたが、やはり久しぶりに会うのは楽しい。1984年にパリ第7大学で同級生だったセルジュ君は、昼食にタイ料理を食べた後にリュクサンブール公園で2時間も話した。彼が教えているリセ・モンテーニュにも行った。

教え子のSさんとも半日過ごした。私は15年半も大学で教えていながら、在学中や卒業後にフランスに留学した学生はSさんしかいない。これまではイギリス、カナダ、ニュージーランドなど。Sさんは行く前はフランス語も怪しかったが、1年過ごしただけあってかなり流暢に。パリの土地勘もしっかり身について、私の先に立って歩いた。

Sさんと行った穀物取引所跡のピノー・コレクションは安藤忠雄が改装して美術館にしたもので、アルテ・ポーヴェラ展は準備中だったが、1階での韓国のキムスージャの展示は、1階のホールの床に鏡を敷き詰めてなんとも不思議な空間を作り出していた。

ほかに見たのはポンピドゥー・センターで始まったばかりの「シュルレアリスム展」。これはいかにも怪しげなものとしてシュルレアリスムを見せる演出で、かなりがっかりした。冒頭の大きなスクリーンに写す映像とい、迷路のような空間といい、普通はシュルレアリスムに属さない世界各国の作品を混ぜる出品作といい、どうもピンと来ない。

疲れていたが、常設展でいつものマティスやピカソやブラックなどを少し見るだけでずいぶん落ち着いた。別の日にたまたま時間が空いて行ったルーヴル美術館は、「スポーツと美術展」がギリシャ時代の彫刻などがたくさんあって意外におもしろかった。これは小さな展示だったので、常設展で17世紀から19世紀の絵画を見た。

「リシュリュー翼」の2階はとにかくフェルメールを始めとしてオランダ絵画が見飽きない。レンブラント、ヴァン・ダイクなどの有名画家から知らない画家まで、何時間でも過ごせるくらい。だんだんフランス絵画が始まると退屈になってゆくが、「シュリ―翼」に移って17世紀のクロード・ロランや18世紀のユベール・ロベール、19世紀のアングルやコローなどは知っている作品もあってかなり楽しめた。

今回は2時間弱。いつかルーヴル美術館で丸一日過ごしたいと昔から思っていたが、次回は本当に実現しようと思う。それにしてもルーヴル美術館の日本語版の案内パンフのレイアウトはフォントといい、文字の大きさや位置といいひどい。空いたところに日本語を入れるのではなく、日本人のプロのデザイナーに頼めば簡単な作業のはずだが。

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