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2024年10月 8日 (火)

『西湖畔に生きる』にとまどう

中国のグー・シャオガン監督は一作目の『春江水暖』がなかなかよかったので、二本目の『西湖畔に生きる』を期待して劇場に見に行った。一作目は「山水映画」第一作と銘打たれていたが、今度はその第二作というし。

最初は風光明媚な茶畑で働く中年女性タイホアと大学を出ながら仕事に迷っている息子ムーリエンが出てくる。二人は出て行って戻らない父親のことを恨みながら地味に暮らしている。ムーリエンの叔父はタイホアと仲がよく、ムーリエンには自分の会社で勤めるよう促す。

ここまでは牧歌的な感じだが、この幸せが一挙に壊れる。タイホアはちょっとしたことから茶畑の仲間たちに嫌われて、同僚と2人で出ていくはめになる。その同僚が連れていったのが、その弟が参加しているという怪しげな「足裏シート」を売りさばくマルチ商法の会社だった。

その会社に向かうバスから既に異常で、たどり着くとテンションはさらに高まる。結局、数十人が洗脳状態で足裏シートを何十セットも買わされる。実は息子も別のマルチ商法の会社に参加していたが、家族の苦情を聞いておかしいと思い、母のもとに戻ったところだった。

母は足裏セットを買うために自宅を売り払い、狭いアパートに住んでいた。何より驚いたのは、そのアパートに膨大な数の足裏シートがあり、母が厚化粧で服もずいぶん派手になったことだった。息子は何とか母親を抜け出させようとするが、それは簡単ではなかった。

とにかくマルチ商法の会社が会員を集めて洗脳する場面がえんえんと続く。たぶん全部で1時間ほどあったと思ったが、見ていてちょっとウンザリ。こんなことは日本でも実際によくあったことだが、これまで苦しんできた人々が宗教的な盛り上がりで解放されてゆくさまをカリカチュアのように見せていた。

カリカチュアと言えば、ドローン撮影で茶畑のある山林地帯のすぐ隣に高層ビルが立ち並ぶ地域があることも鮮やかに見せていた。これが今の中国と言わんばかりの象徴的な映像だった。そして終盤はさらにいくつもの象徴を散りばめて、「山水映画」にしてしまう。

その映像の巧みさに感心したと同時に、今回はかなりとまどった。

 

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