東宝のDVDに慌てる
最近、新発売の東宝のDVDに慌てている。東宝といえば、黒澤明とゴジラ作品以外は有名作品でなければ秀作であってもDVDを出さないことで有名だ。一説には、あの会社は1万枚売れないDVDは出さないとか。例えば戦後の成瀬巳喜男作品でDVDで出ていないものはたくさんあった。
原節子、佐野周二、香川京子の『驟雨』(1956)、杉村春子、上原謙の『晩菊』(1954)などは本当に逸品だが、出ていなかった。ところがこの2本は数年前にスルリと出てしまった。まあこれらは原節子などの大スターが出ているのだからわかる。
ところが最近、石田民三監督の『花ちりぬ』(1938)が出ていたのには驚愕した。働き始めた頃、つまり1980年代末に日本に来た日本映画好きのフランス人女性に好きな作品としてこの題名を聞いた時、私は監督の名前さえ知らなかった。聞けばノエル・バーチが日本映画論で触れており、パリのシネマテークで上映したらしい。
バーチの本は「To the Distant Observer」で、私はパリで仏語版を買っていたが読んでいなかった。めくると確かにこの監督を高く評価していた。私がこの映画を実際に見たのは2000年頃のパリだったと思うが、記憶は怪しい。2年前に国立映画アーカイブの東宝特集の中のミニ特集で上映された時は見に行ってここにも書いた。幕末のお茶屋が舞台で、芸者だけが20人近く右往左往する異色作だ。
その時は石田作品を3本見て興奮した。今回出たDVDはほかにも『むかしの歌』と『花つみ日記』(共に1938年)。『花つみ日記』は国立映画アーカイブで見損ねていた。いずれにせよ、売り切れるといけないと思って慌てて3本を買った。
それらをアマゾンで買っていたら、戦前のJOCや東宝の成瀬巳喜男作品もDVDがぞろりと出ていることが判明。もともと戦前の成瀬はどこからもDVDが出ていないが、松竹蒲田時代のサイレントはアメリカで数本出ているので買ってあった。ところがJOCに移ってからは全くなかった。とりあえず傑作の誉れ高い『妻よ薔薇のように』(1935)と『鶴八鶴次郎』(1938)をすぐに買った。
全部で10本近く出ていてさらに追加で何本も買った。1本2750円でアマゾン価格で2012円だからお手頃。たぶん全部買うと思う。最近気がついたのは、鈴木英夫作品も3本出ていたこと。これも慌てて名作『この場所に女ありて』(1962)を買った。たぶんあと2本も買うだろう。
東宝はどうしたのだろうか。ひょっとして担当者が映画好きに変わったのか。いずれにしてもすべて買うしかない。
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