少しだけ東京国際:その(4)
昨日、久しぶりに連日で文章をアップした。昨年9月末の毎日ブログ更新停止宣言からだいぶたつが、東京国際映画祭なので書くネタはたくさんある。この映画祭は数年前に六本木から銀座・日比谷に移った。これはもともと私が希望していたことなので大歓迎だった。
六本木ヒルズの洞窟のようなTOHOシネマズに閉じ込められる日々は、本当に苦痛だった。今は銀座の映画館やホールで何倍も気持ちがいい。食べるのも飲むのもお茶一杯でも選択は豊富で、居心地がいい。
唯一の問題は、会場が分散していて誰とも会わないこと。プレスと業界向けの上映はシネスイッチ銀座だが、一般向けのシャンテやTOHOシネマズ日比谷12や13(旧スカラ座など)からは遠い。丸の内東映やピカデリーは遠くはないが、それでも会うのは難しい。
あえて言えば核となる大劇場がない。TOHOシネマズ日比谷を全館使えたらいいが、東宝は離れた12,13とシャンテしか貸さなので、あえて言えばシャンテ3館か。しかしメインとしては小さいので私は丸ピカの3スクリーンをメインに同じ建物の有楽町朝日ホール(今年からはフィルメックスが離れた)を使ったらどうかと考える。サブは丸の内東映の2館。
さてコンペ作品に移るが、『敵』に続いて日本映画が不思議な魅力を見せている。大久明子監督『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、奥手の大学生小西が2人の女子の間で揺れるさまを軽々とかつずっしりと描く。「さっちゃん」が小西に長い長い(本当に)告白をするシーンには本当に驚いた。一作ごとに新たな挑戦を見せる意欲作。4点。
片山慎三監督の『雨の中の慾情』は別の意味で奇想天外だ。時代も場所も示さないが、どうも戦前のようだ。冒頭に大雨の停留所で雷が落ちるからと知らない女を脱がせてしまいに襲う成田凌が出てくる。これは白黒で、どうも彼が演じる漫画家の義男が描くマンガの一シーンのようだ。
それからエロチックな福子(中村映里子)と伊守(森田剛)が愛し合い、義男はそれをのぞき見する。伊守は金持ちの妻の住む「南」に行ってしまい、義男と福子は追いかける。税関は中国語で「南」は中国人が住むようで、伊守の妻も中国人。そのあたりからだんだんわからなくなって、2人の男は戦場にいる。最後まで謎だが、とんでもない映画。これは台湾との合作でフランスのセルロイド・ドリームズが国際配給という。4点。
ルーマニアのテオドラ・アナ・ミハイ監督『トラフィック』はクリスティアン・ムンジウが脚本で製作らしい力作。オランダのルーマニア移民が美術品強盗に手を染める様子をサスペンスと社会派の両極に揺れながら描く。これはすごい。最初に老いた女が何かを捨てている。それをスマホで撮る若い女。これが見終わるとじんわりと効いて来る。4.5点。
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