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2024年11月20日 (水)

アーティゾン美術館の毛利悠子

ブリヂストン美術館がアーティゾン美術館となってオープンしたのはコロナ禍が始まった2020年初めだったが、今やすっかり京橋に馴染んでいる。とりわけ最近は隣のビルも完成して周囲にベンチがたくさんできて、いい感じになってきた。

私は昔から美術館では竹橋の東京国立近代美術館が一番好きだが、好感度というか快適さではアーティゾンの方が上回るかもしれないと思い始めた。何といっても周りには皇居と毎日新聞社しかない竹橋に比べて、京橋はニューヨークのMOMAにも似てまさに繁華街にある。

ここでは時々現代美術作家と所蔵作品を組み合わせる「ジャムセッション」という企画展をやっていて、今は「毛利悠子 ピュシスについて」が始まったばかりで2月9日まで。この作家は名前しか知らないが、今年のベネチア・ビエンナーレの日本代表というから見てみたいと思った。

これが広い空間のインスタレーションで、壁はほとんどない。妙な機械や電線や映像が並び、微妙に動き、あちこちから音が出る。そして時々ブランクーシの彫刻やマティスやクレーの絵がある。これが不思議と居心地のいい空間で、いつまでもいたくなる。人間の五感に静かに訴えかけてくる感じ。

これが6階で、5階からは常設が始まる。5階は「ひとを描く」だが、最初に古代ギリシャの土器が30点ほど出てきたのには驚いた。確かにすべてに人間が描かれている。アーティゾンはこんなものまで持っているんだと改めて思う。それから古代ローマが少しと日本人による模写が並ぶ。

その後は一挙に19世紀後半になって、「画家とモデル」ということでセザンヌやピカソやルノワールが並ぶ。マネやセザンヌの「自画像」には見入ってしまう。またルオーが描くキリスト像は異彩を放っていた。

4階はコレクション選だが、特別コーナーとして「マティスのアトリエ」があった。彼のアトリエを思わせる絵を並べ、実際のアトリエの写真も何枚も展示して、彼がどんな環境で絵を描いていたか、よくわかる。切り絵の「ジャズ」シリーズもあった。

あるいは黒田清輝や浅井忠や青木繫などの19世紀末や20世紀前半の絵を見るのも楽しい。戦後の斎藤義重や山口長男などのほか、白髪富士子の絵もあってびっくり。私は東近美のコレクションはだいたい知っているが、ここの所蔵作品もだんだん覚えてきた。そんなこんなで快適な時間を過ごした。

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