少しだけ東京国際:その(3)
東京国際映画祭で相変わらずダメなものの1つに、「デイリーペーパー」がある。これは国際映画祭には必須で山形国際ドキュメンタリー映画祭は最初からあったが、東京国際には長らくなかった。できたのは2000年頃からか。それから全く進化していない。
たったの2頁で、一番目玉の星取表はわずか4人だし、毎回新たに上映された作品の星しか載らない。これまでの号で出た作品の星取表は日比谷のプレスセンターに行ってバックナンバーを探さないと見られない。ではネットで見られるかというと、星取表のある2ページ目は出ていない。
2頁目の左下に小さな欄があって、申し訳なさそうに4人の2、3作品分が載っている。まるで隠しているかのようでネットには載せない。石飛徳樹記者が4つ星なら見ようなどという業界や一般のファンもいるだろうに。そもそもカンヌなどは10頁くらいあるので、せめて4頁にして全作品の星取表をいつも載せて、ネットでも公開すべき。
ついでに言うと、これは朝1番の10時頃の上映前には会場のロビーにない。映画祭の毎朝の楽しみは最初の9時の上映前に行って、これを見ながら友人と「やはり賛否両論だな」などと話すことなのに。ベネチアは何度も行ったのでわかるが、朝8時には主なホテルのロビーにある。
さて作品について述べると、今回はコンペに中国語圏の作品が多く、15本中5本。日本映画の3本より多い。よかったのが台湾のホアン・シー監督の『娘の娘』。最初にホウ・シャオシェンとシルヴィア・チャンの名前が製作として出てきて驚く。ホウ監督の助監督をしていたようだ。
映画は2016年、シルヴィア・チャン演じる中年女性が病院のベッドにいるところから始まる。その母親らしき女性とエマと呼ばれる若い女性と揉めている。さらに別の場所で仲の良さそうな2人の女性が、母の見舞いにいくべきか議論している。
映画はこの5人の女性の関係を少しずつ解きほぐすように、2024年の現在から時おり過去に戻りながら進む。観客がすべての人間(5人とジョニーという中年男性と2人の子供)の関係を把握するのは終わりに近いが、巧みな脚本に乗せられてしまう。表現は抑制が効いていて、特にシルヴィア・チャンの日常の描写が抜群。4点。
中国のヤン・リーナー『小さな私』も力作。人気スター、イー・シャンシーが脳性マヒの高校生を演じてすばらしい。知能的には全く劣らないのに、動作が鈍いために周囲からは知恵遅れ扱いされる少年の静かな戦いの姿が胸を打つ。音楽も含めていささか盛り上げ過ぎなのが残念で、131分は少し長い。3.5点。
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