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2024年11月28日 (木)

東京フィルメックスも少し:その(1)

去年に引き続き、今年も東京フィルメックスは東京国際映画祭と時期をずらした。2020年から同じ時期にしたが、2年やってみたら集客が難しかったというところだろうか。今年は去年よりさらに時期をあけている。見る側としてはその方がいいのは間違いないが。

最初に見たのは「メイド・イン・ジャパン」部門、フィリピンのジャヌス・ヴィクトリア監督の第一回長編『DIAMONDS IN THE SAND』。日本、マレーシア、フィリピンの合作でリリー・フランキー主演、芦澤明子撮影という陣容に惹かれた。

妻に捨てられたヨージは中年の会社員だが、会社はコロナ禍でつぶれてしまう。母(吉行和子)は施設にいるが、彼のことを心配してくれる存在だが、だんだん弱くなってある日亡くなってしまう。孤独な日々を送るヨージは、母の世話をしていたフィリピン人の看護師、ミネルバが帰国したので、フィリピンに行ってみる。

マニラは喧騒の渦だった。「孤独」になることが不可能なほど隣人たちとの密な付き合いが始まる。最初はヨージは戸惑うが、次第にその中に入ってゆく。日本の部分ではヨージと同じアパートに住む男の孤独死や母との会話などが実に丁寧に撮られているし、それと対照的なマニラのけばけばしさも雑多な生活空間もリアル。第一回長編らしい心のこもった作品。3点。

次に見たのは「特別招待作品」でメキシコのアストリッド・ロンデロ&フェルナンダ・ヴェラテスの『スホ』。殺し屋の父を持つ少年スホの話で、前半は両親の死後、叔母たちと暮らす少年時代、後半は10年くらいたって都会で暮らす姿を描く。

正直、前半はわかりにくかった。画面は暗いし、象徴的な表現が多かったが、少年の父親がとんでもない男で、叔母やその友人とその2人の息子と逃げて、隠れながら暮らす怖さは伝わってくる。

青年になったスホはある時、大学にいる。通りかかった教室に入り、女性教授スーザンの文学の授業を受けようとする。彼女はスホを助けようとするが、田舎から友人がやってきて結局は彼女を裏切ることになる。監督は女性2人組のようだが、語りと演出の機微を心得た実力派に思えた。3.5点。

今回はメイン会場が有楽町朝日ホールから丸の内東映に代わった。朝日ホールの「ドーダ」感がなく、庶民的なかつての「小屋」のムードがいい。

 

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