最近の展覧会いくつか
映画は見たすぐに書かないと印象が日々薄れていくが、本や展覧会の場合はだいぶたってからでも書ける。本は現物が目の前にあるし、展覧会はチラシやHPの絵を見れば思いだすことができる。だから書くのが遅くなるのも出てくる。
今日終わってしまうのが、サントリー美術館の「没後300年記念 英一蝶」展。この画家は名前は知っていたが、まとめて見るのは初めて。元禄時代前後に活躍した何でも描ける日本画家だが、47歳で謀反の疑いで三宅島に流刑になったという。
この時代は「島一蝶」と名乗っていたそうだが、この頃の絵も三宅島の稲根神社や個人蔵から出品されている。華やかなのは江戸に戻って「英一蝶」と名乗り出してからだが、《雨宿り図屏風》などお屋敷の門に集まる庶民たちを描いていて楽しい。これは東京国立博物館とニューヨークのメトロポリタン美術館がそれぞれ持っている2点が展示されていて、比べるのも楽しかった。
メトロポリタンと言えば、裏にも絵がある大きな《舞楽図・唐獅子図屏風》は迫力満点。日本の全国各地の美術館から集めた力業の展覧会だった。
意外にあまり心が動かなかったのが、国立西洋美術館の「モネ 睡蓮のとき」展。これはパリのマルモッタン・モネ美術館から50点ほど借りて、日本中にあるモネの「睡蓮」を足したもの。もともと西美にはモネの「睡蓮」が多い。これはいわゆる松方コレクションで、この美術館としてはいつかやるべきテーマだったかもしれない。
「睡蓮」のテーマは1890年、50歳の時にジヴェルニーで睡蓮の庭のある家に住み始めてからだ。それから1920年代まで、えんえんと睡蓮を描く。途中からは眼を悪くするが、それでも妄想のような睡蓮を描き続ける。その自己充足ぶりが絵からも感じられて、見ていてあまり刺激を受けなかった。1870年代や80年代の別のテーマの絵もあった方が、モネの天才が際立つ気がした。これは2月11日まで。
東京国立近代美術館の常設展の一部で12月22日まで開催の「フェミニズムと映像表現」も興味深かった。特に出光真子の《主婦の一日》(1979)は4人の主婦がそれぞれの退屈な1日を語るビデオアートで、画質は悪くても強烈なメッセージが伝わってきた。塩田千春の《Bathroom》は風呂で頭から泥をかぶる女性を撮った白黒映像で、最近の彼女の華やかな展示の奥底にあるマグマを見た気がした。
パリの株式取引所跡の美術館で鏡の展示を見た韓国のキムスージャは世界各地で立ち尽くす1人のアジア人女性の後ろ姿を見せ、遠藤麻衣と百瀬文は粘土をこねる映像に女性器について話す2人の女性の声をかぶせる。いやはや見飽きない。
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