少しだけ東京国際:その(5)
今日で4日連投だが、やはり映画祭は早く書いた方がいい。今日の夜に受賞結果が出た後だと間が抜けてしまう。作品評の前に会場問題について一言。これは最終的には「専用会場」が必要になる。カンヌなど三大映画祭にはあるし、釜山も作った。もちろんこれらの映画祭も通常はほかのイベントに使っている。本当は東京都が都庁跡地に国際フォーラムを作る時に考えるべきだった。
さて、コンペ15本で結局見たのは11本。「アジアの未来」で2本、「ワールド・フォーカス」で2本だから計15本。大学で教えながらだからだから、まあまあだろう。コンペで気に入った作品についてはほぼ書いたが、もう1本選ぶとしたらフランス映画の『彼のイメージ』。
監督はティエリー・ド・ペレッティでコルシカ島出身だが、この映画はコルシカ島が舞台でそこの地方紙のカメラマンとして働く女性の生き方を20年ほど追いかけたもの。始まってすぐ、主人公のアントニアが交通事故で亡くなる。それから20年前に戻って彼女が20歳頃からを見せる。
彼女はコルシカ独立運動の闘士パスカルに恋をして関係を結ぶが、パスカルは過激な運動で逮捕される。数か月後に出獄するが、またしばらくすると逮捕されてそれを繰り返す。彼女は写真に興味を持ってカメラマンとして地方紙に雇われるが、彼女が撮りたい写真は過激だと非難される。そこで苦労しながら次第に大人になってゆく。青春の情感や切なさが伝わってくる。3点。
さてほかの3本はちょっと厳しかった。ポルトガルのセルジオ・グラシアーノ監督の『英国人の手紙』はかつてポルトガルの植民地だったアンゴラに残した父の手紙を探す詩人の物語。時代が19世紀末から現代まで錯綜し、ポルトガル特有の植民地幻想が描かれる。妙な魅力はあるが見ていてどうしても退屈で2.5点。
スロバキア生まれのカタリナ・グラマトヴァの第一回長編『大丈夫と約束して』は、15歳の少年が祖母の家で夏休みを過ごすさまを描く。彼は母が好きだったが、村の人々の噂から彼女の怪しい生き方を知る。私には何を言いたいのかわからず、2点。カザフスタンの監督アディルハン・イェルジャノフの『士官候補生』はシングルマザーの母親が士官学校に息子を入れるが、そこは腐敗と暴力の巣窟だった。これをホラー風に描く演出が好きになれず、2点。
たまたま空いていた時間に見た「アジアの未来」のアフガニスタン出身のロヤ・サダト監督の『シマの唄』はこれらより見ごたえがあった。ある母親が、30年以上前の1978年を思いだす。それは男尊女卑のとんでもない世界で、さらにソ連の侵攻と反ソ運動があった。そんななかを何とか生き抜いた女性の姿は心を打つ。3.5点。
「ワールドシネマ」のアルトゥーロ・リプステイン特集の『純潔の城』(1973)には心底驚いたが、これについては後日。さてコンペの賞予想は、グランプリが『トラフィック』、主演女優賞が『娘の娘』のシルヴィア・チャン、主演男優賞が『小さな私』のイー・ヤンチャンシー、そして『今日の空が…』も何か賞を取ったらいいなというところ。シルヴィア・チャンだけは当たるかな。
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