初めて読むハン・ガン
韓国の女性作家、ハン・ガンが今年のノーベル文学賞を取った時、実は名前も知らなかった。調べるともう何冊も翻訳が出ていて、ファンもいるようだ。1970年生まれで、私より一回り若い。
池袋の本屋で彼女の小説が並んでいたので、とりあえず文庫の『すべての、白いものたち』を買った。表紙に白黒の写真で、誰かが幼児服のような布切れを持っており、顔の部分は切れていた。そのミニマルな佇まいが気に入った。
読んでみると、これが中身もまた必要なもの以外を削ぎ落したような短い文章が並んでいた。小説というより、詩というかエッセーというか、つぶやきのような言葉が並んでいる。まず、冒頭の文章に打ちのめされた。
「白いものについて書こうと決めた。春。そのとき私がやったのは目録を作ることだった。
おくるみ/うぶぎ/しお/ゆき/こおり/つき/こめ/なみ/はくもくれん/しろいとり/しろくわらう/はくし/しろいいぬ/はくはつ/寿衣」
/は改行なので、これだけで1頁になる。私が韓国の白としてすぐに思いついたのは白磁、つまり真っ白の陶器だったが、それは書かれていない。韓国は青磁もいいが、白磁はもっといいと思ったのは、一度だけ行ったソウルで国立博物館に行った時か。確か詩人の茨木のり子さんがどこかで白磁のすばらしさについて書いていた気もする。
本に戻ると、この目録の後にはこう続く。
「単語を一つ書きとめるたび、不思議に胸がさわいだ。この本を必ず完成させたい。これを書く時間の中で、何かを変えることができそうだと思った。傷口に塗る白い軟膏と、そこにかぶせる白いガーゼのようなものが私には必要だったのだと」
この本はこんな感じで全部書き写したくなるほど、言葉に味わいと強さがある。翻訳であるのもかかわらず。この本を最初に読んだのはよかったのかわからない。次は具体的な物語のあるもの、例えば光州事件を扱ったという『少年が来る』を読んでみたい。
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コメント
ここに書いたら古賀さんに届くのでしょうか。ちょっと不安ながら初投稿します。
彼女の「菜食主義者」を読みました。存在の深いところに響いてくるのだけれど、
なぜと言われても答えられない。それぐらい、強い深遠な印象を受けました。
物語として発想が奇抜でおもしろいのですが、そんなプロットのおかげではない、
自分でも気づいていない生き物としての深層心理に迫るような感じで…。
「白いものについて」もぜひ読みたいです。、光州事件について扱った小説も読みたいと思っています。
投稿: 辻田 | 2024年12月23日 (月) 18時58分