「メキシコ映画大回顧」:その(2)
いつの間にか「メキシコ映画大回顧」が始まって、ようやく2本見たらもっともっと見たくなった。ところが全く時間が取れない。大学は学期末試験と採点、ゼミ誌指導、卒論審査に加えて修論や博論の審査と続く。赤ペンを持って他人の文章を直すだけで丸一日が過ぎてゆく。
さらに私の次の新書がようやく4月刊と決まり、初校ゲラまで出てきた。今度は自分の文章を直さないといけないが、校正者の極めて適切な指摘が毎ページごとにいくつもあって、呑気に他人の文章を直している場合ではない。
そんな日々に見に行ったのが、ポール・レドゥク監督の『ジョン・リード 反乱するメキシコ』。この監督は昔『フリーダ・カーロ』(1984年)を見たはずだが、全く記憶にない。「ラテン・アメリカ映画祭」で女優さんも挨拶したはずだが。今回これを見に行ったのはチラシに「ヌエボ・シネの担い手の一人」と書かれていたから。
実は次に出る本のために、ブラジルの「シネマ・ノーヴォ」やキューバの「ヌエボ・シネ」を何本か見てずいぶん心を動かされたから。もしメキシコにそういう映画があったらゲラ段階で加えるかもしれないとも考えた。
ところが『ジョン・リード』はちょっと期待外れ。既に見たこの特集の2本が黄金時代の豪華絢爛なセットで美男美女が繰り広げるドラマだったこともあるが、魅力はだいぶ落ちるように思われた。
映画は1910年代のメキシコ革命の時にメキシコを訪れたアメリカ人ジャーナリスト、ジョン・リードを中心に描く。彼は革命軍に近づき、従軍記者として取材をしたいと申し出る。時には断らながらも軍隊にくっついて行き、危険な目にも逢う。
ある軍とは離れ、別の軍を追いかける。革命軍の将校は異様に威張っている。おおむねアメリカ嫌いで、アメリカ人記者にもいい顔をしない。それでもリードは一緒に酒を飲んで何とか話を聞き、兵士たちと仲良くなる。そんな日々がセピア調の白黒で描かれる。
そもそも私にメキシコ革命の基本的な知識がゼロのせいもあって、最後までピンと来なかった。確かに黄金時代の映画でないことは確かだが、何をもってこれが「新しい映画」なのかはわからなかった。ドキュメンタリー調ではあったが。
観客は50名ほどでこれまでの2本の半分以下。みんなわかっているのかどうか。いずれにしても、時間ができたら「メキシコ映画大回顧」は可能な限り見たい。2月9日で終わるのが惜しい。今の私にはどうも新作のほとんどがどれも似ているように思えて、見る気が起こらないから。
そういえば、7階で「映画監督 アンジェイ・ワイダ」展が開かれている。『灰とダイヤモンド』(1958)の主人公のジャケットや靴を見るだけで、十分に価値がある。それにしてもよほど丁寧に保存されていたのか、60年以上の物とは思えないほど状態がいい。これは3月23日まで。
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