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2025年4月15日 (火)

『HERE 時を超えて』の定点観測

「定点観測」という言葉がある。同じ場所にカメラを据えて、時間をおいて撮り続けたものだ。写真が多いが、動画もある。しかし2時間近い映画のほとんどを定点にカメラを据えたハリウッド映画は、ロバート・ゼメキス監督の『HERE 時を超えて』が初めてかもしれない。

予告編で若い頃のトム・ハンクスとその老いた姿が出ていたので、彼の数十年を描く映画だと思っていた。ところが映画は冒頭で、恐竜が走る森を見せる。そこにネイティヴ・アメリカンが暮らし始め、少しずつ「白人」の支配が始まる。そこに家が建つのは20世紀初めのことで、穴を掘ってレンガを組み始める。

そこにある家族が住み始めて、トム・ハンクス演じるリチャードの両親がその家を買うのはしばらくしてから。迷った末に買って、子供が生まれてリチャードの物語が少しずつ始まる。

ポイントは2つで、1つはカメラが窓に面した居間を台所の側から写し続けること。まだ家を建てる前からカメラは動かない。もう一つはその動かないショットの一部が長方形のウィンドウになり、そこで別の動きが始まる。例えばテレビのあたりが写って、真珠湾攻撃を伝える。

それぞれの場面は2、3分のことが多く、全部で10くらいの時代が次々と見せられるので最初は落ち着かない。次第にリチャードの物語が中心で一番長いことがわかって、だんだん落ち着いて見ることができる。彼は画家志望で高校生でマーガレット(ロビン・ライト)と出会い、妊娠させてしまう。

ここからはよくあるアメリカ映画だ。子供は自立し、夫婦の関係は微妙になり、両親に認知症が始まる。終盤はこの夫婦の老いた姿を映し、ちょっと泣かせる。そして始めてカメラが動きだすのだが、反対側や家の外を見て本当に驚く。

104分、それなりに楽しめたからすごい。定点観測とは言え、さまざまな時代を見せるから、それなりにお金はかかっている。さらに10代から70代までのトム・ハンクスとロビン・ライトをCGを使いながらも実にリアルに見せているのも快い。ハリウッドがまだ挑戦を続ける姿を見た気がする。

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