『サブスタンス』は面白いか
フランスのコラリー・ファルジャ監督がデミ・ムーアを主演に撮った映画『サブスタンス』を劇場で見た。予告編でかなりグロテスクな感じがあったので、半分は怖いもの見たさ。去年のカンヌの脚本賞というのも興味があった。
50歳になった女優エリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、テレビのエクササイズ番組を降ろされる。失意の彼女はふらふらと運転して交通事故にあい、ハンサムな若い医者からこっそり渡されたのが再生医療のメモ。指定された場所に行って「サブスタンス」という薬品と再生キットを入手する。
それを注射すると彼女の背中を割って若い美女が現れた。スーと名乗り、すぐにエリザベスの後釜としてテレビに採用される。エリザベスは洗面所の奥の暗室で気を失っている。しかし1週間後にはスーはエリザベスと交代して寝込む。起き上がったエリザベスはスーの活躍に嫉妬し、スーはエリザベスを憎む。
何回か交代するうちにスーは大スターになるが、エリザベスの体の一部は急激に老化する。エリザベスは元に戻ろうと試みるが、途中で止める。それはさらに悪い結果を生んでゆく。
2人が交代する時にはまるで『2001年宇宙の旅』のようなサイケデリックな画面が出てくるし、長い廊下や「サブスタンス」を受け取る倉庫など凝ったシーンがいっぱいある。これは相当に映画を見た監督だなと思いながら見ていると、後半はホラー映画というかクローネンバーグのようなクリエイチャーものになってくる。
ルッキズムというテーマに正面から取り組みながらも映画愛溢れる画面が作れる才人だが、終盤がホラーに寄り過ぎたのが残念。2時間22分だが、後半30分ほどをなくしてシャープな形で終わったらよかったのにと個人的には思った。
いずれにせよ、最初から最後まで刺激たっぷりで画面から目が離せなかった。何より老いた姿をそのままさらけだしたデミ・ムーアがよかった。あそこまで怪物にしなければ。面白かったが、全体が計算づくの作り物でもあった。いかにも21世紀の映画かも。
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