『ミッション:インポッシブル』の没入感?
トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』を劇場で見た。一番思ったのは、最近大学生がよく口にする「没入感」という言葉だった。これはどうも彼らにとって、映画を見る時の最大のポイントのようだ。
例えば、ホラー映画の没入感について、あるいはクリストファー・ノーラン監督作品の没入感をめぐって卒論を書こうとする学生がいる。あるいは古い映画を見せると「いま一つ、没入できなかった」とか。
たぶん、四六時中スマホを見てSNSやゲームをしている若者たちは、それを上回る没入感を映画に期待しているのではないか。まず、感情移入が必要だ。そのためには周到に仕掛けられた伏線が必要でそれはすべて回収されなければならないようだ。私にとってそんなものはもはや映画ではないのだが。
『ミッション:インポッシブル』の最新版を見たのは、たまたま時間が合った劇場だったが、それは東宝のScreenXというもので追加料金が必要だった。「次世代型映画上映システムとして世界的に注目を集めている、3面マルチプロジェクション・映画上映システムです。 正面のスクリーンに加え、両側面(壁面)にも映像が投影され、270度の視界すべてで映画を鑑賞することができ、映画の世界に自分の感覚が没入していくような臨場感を体験することができます」(劇場HP)
つまり普通の正面のスクリーンに加えて、大事なシーンになると左右の壁にもその続きが映り、あたかも観客が映像に取り込まれるような気分になる。今回の一番の見所は、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントがAIの「エンティティ」を倒す武器を得るためにロシアの潜水艦の艦内に潜入するところだが、彼が水圧に耐えながらパンツ一つで艦内を行き来して探すシーンでスクリーンは左右に拡大する。
それが見ている観客を水が取り囲み、そこを泳ぐような感じになってくる。あるいは終盤の空中戦では、イーサンが小型プロペラ機に乗って、もう1つのプロペラ機に乗った敵から武器を奪い、打ち落とす。そこでは見ていると自分の足元に空が広がって、空中に浮いている気分になる。
だけどこの程度の「没入感」ならば、遊園地のジェットコースターの方が何倍もいいのではないかなあ。それにしても今回は映画の前にトム・クルーズの日本の観客への挨拶もあったし、全体に彼が前面に出過ぎてアップも多かった。これまでのシリーズの集大成的に過去の映像もたっぷり見せた。彼のナルシズム大会にも見えた。
トム・クルーズは私の同世代だしハリウッドの男優で唯一違和感がなかったが、これを見たらしばらくは見たくなくなった。
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