『ドールハウス』のバカバカしさ
矢口史靖監督の『ドールハウス』を劇場で見た。この監督はこれまで『ウォーターボーイズ』(2001)や『スウィング・ガールズ』(2004)、『ハッピー・フライト』(2008)など、とにかくたっぷり楽しませてくれた。
正直に言うとそのノリは時にバカバカしすぎて、「映画的」というよりは一発芸的なアイデアの産物のようにも見えた。最近は『WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜』(2014)や『サバイバル・ファミリー』(2017)など昔ほどヒットしなくなったが、その分いい加減さに磨きがかかっている。今回もその路線で、「ありえない」ほど不真面目なホラーだ。
最初は長澤まさみ演じる母親が不注意で5歳の娘を亡くし、骨董市で見つけた古い人形を愛し始める。その異常なまでの執着ぶりに夫(瀬戸康史)やその母(風吹ジュン)は心配を始めるが、次の娘が生まれてそれも収まった。ところがその娘、真衣が人形に振り回され始めた。
ここまではありがちなホラーで、あえて作り物のように単調に作られている。ところが夫がその人形を神社で供養してもらおうと思ったあたりから、妙な感じが出てくる。人形の写真を神社に送ると明日の供養の予約は終わっているが、これは無理にも引き受けるという。しかし実際に火をつけようとして恐れ出し、呪禁(じゅごん)師の神田(田中哲史)が引き取る。
他方、警察も動き出して捜査を始め、私服警官(安田顕)は人形を持って動き出すが、途中で怖がって逃げ出す。神田は2人を連れて、この人形の謎を解こうとする。人形博物館の老人(品川徹)に話を聞き、この人形を作った人形師の妻が娘と心中を図って人形を埋めた新潟の佐渡近くの神無島へたどり着く。
その途中には神無島へ行くオカルト系ユーチューバーも現れて、家庭内の心理ドラマは怪しげな人物たちのおまじない合戦へ向かう。田中哲史、安田顕、品川徹など途中で出てくる人々がことごとく胡散臭く、ところどころで笑いが出てくる。
まるで最後の最後まで芯のないくだものを剝き続ける感じで、クスクス笑いだけが増してゆく。矢口史靖監督はホラーは初めてではないかと思うが、得意の小さなおふざけと悪乗りが暴発してゆき、誰も止められない感じが楽しかった。
ある種の反ドラマ、反映画なのだが、こんなのも悪くない。たぶん、伏線回収と感情移入と没入感を求める今の若者には受けないかもしれないが。
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