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2025年7月 2日 (水)

朝ドラ『あんぱん』を見る:その(1)

毎朝、NHKの連続テレビ小説『あんぱん』を見ている。最初は見ていなかったが、しばらくしてから見るようになった。たまたま見たら、少年の崇が高知市内に住む再婚した母(松嶋菜々子)に歩いて会いに行って「もう来ては行けない」とお金を渡されるが、それを投げ返して逃げ帰るシーンが妙に印象に残った。 

それから崇は青年になって東京の美術学校に行く。そこで見る銀座の光景もよかった。もちろんNHKのチャチなセットだけれど、和光や木村屋があって柳の木が並ぶ大通りや小道があると嬉しくなった。学校の先生のいかにも自由主義的な雰囲気もよかった。

そして彼が好きだった暢が女子師範学校に行き、愛国に目覚めるあたりから面白くなった。尋常小学校の教師となり、生徒たちと戦地に慰問袋を送って、地元紙に「愛国の鏡」と紹介される。東京から帰ってきた崇には「このご時世に浮かれている」と冷たい。

そして暢は一等機関士の若松次郎(中島歩)と見合い結婚する。ドイツ製のカメラを持ち歩く次郎とのやり取りはよく描けているが、二郎がふと「日本は勝てはしない」とつぶやいて暢を驚かせる。暢の実家の朝田石材店ではパン職人のヤムさん(阿部サダヲ)があんぱんを作っているが、陸軍用の乾パンが欲しいという発注を彼は断った。

陸軍の注文を断って近所からは非難が殺到し、ヤムさんはやむなく乾パンを作ってその方法を朝田家の人々に伝授して去ってゆく。暢の妹の蘭子は祖父に弟子入りしている青年の豪と心を交わすが、豪はすぐに戦死してしまい蘭子は戦争への嫌悪を明らかにする。このドラマにはこうした戦争への無言の抵抗が織り込まれている。

驚いたのは崇が徴兵で小倉の連隊に行き、先輩たちから徹底的に殴られること。これは私も実際に戦争に行った人たちによく聞いたが、彼らの戦争の一番の記憶は「ビンタ」である。崇が小倉に行った回は軽く10回は殴られた。軍隊の理不尽さをここまで描くかと思った。

小倉連隊は中国に行くが、そこでは日本兵の残虐な行為は一切出てこない。一番に描かれるのは兵隊に食料がないこと。崇は宣撫班に配属されて中国人向けに紙芝居を作るが、中国人たちは安易なプロパガンダを無視して崇の作る感情のこもった紙芝居を評価する。中国人は中国語を話し、中国語のできる兵士が通訳をする。

中国人は基本的にまともな人々として描かれている。反対に崇やその友人を除く大半の日本兵は乱暴者で威張るだけのバカな存在だ。残念なのは敗戦直後の軍隊の混乱が描かれなかったこと。崇は帰国し、その弟・千尋(中沢元紀)は戦死していた。この弟が実に味のある存在だったが。そして暢の夫は病死し、暢は戦時中の自分の行為を恥じて教師を辞す。そして偶然に新聞記者の道を歩き始める。

やはりNHKは戦争責任は問わないし、日本軍の残虐行為も見せない。その原則の中で、戦争の愚かさ、日本軍の不条理さを訴えている。

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