『パシフィクション』を見る
フランスの『カイエ・デュ・シネマ』という月刊の映画雑誌はトリュフォーやゴダールなどのヌーヴェル・ヴァーグを生んだ雑誌として名高いが、そこでは毎年2月頃に前年のトップ10本の発表がある。今回東京日仏学院で見たアルベール・セラ監督『パシフィクション』は2022年の1位だった。
昔から『カイエ』のトップ10はいつもヘンだなと思っていた。2011年にナンニ・モレッティの『ローマ法王の休日』が1位になった時などは本当に首をかしげた。実は長年、年間購読をしていたが、2022年頃に同じ号が2冊も届いて何度言ってもその前の数冊が届かなかったあたりで、辞めてしまった。
だから最近は何がトップ10かも知らなかったが、「『カイエ・デュ・シネマ』1位」をウリにする公開が目についた。2024年のアラン・ギロディ『ミゼリコルディア』がそうで、ヘンな興味深い映画だが1位は全くわからない。2023年の『トレンケ・ラウケン』も1位だが、これに至っては私は第1部しか見ていない。それなりに魅力は感じるけれどあと2時間見る気にはならなかった。
そんなこんなで2022年1位の『パシフィクション』を見た。こちらも始まったあたりでは「やはり『カイエ』は当てにならん」と思った。タヒチ島のフランス政府代表のデ・ローラー高等弁務官(ブノワ・マジメル)は、島内や近くの島を訪れながら様々な人々と会う。植民地でいかにもみんなを理解しているように振る舞う欧米人の姿だ。
私は白いスーツの彼の姿を見ながら、上映会場の歴代の東京日仏学院の院長や、イタリア文化会館や東京ドイツ文化センターのトップたちのことをずっと考えていた。昔、彼らとは仕事でいつも会ってきた。いかにも自分はあなたの国を文化を理解していますよという様子を振りまきながら、数年いても日本語はわずかしか覚えず、その奥からエリート意識や出世欲がかいま見えた。
さて、この映画でデ・ローラーはある時、潜水艦を目撃し、その艦長や乗組員が上陸するのを見る。あるいは幻視か。島民からはフランスが20年ぶりに核実験をするので、それに反対する行動を準備中という話を聞く。それを聞いて、背後に中国かロシアか、あるいはアメリカの影を想像する。
彼の秘書シャンナは男性か女性かわからない謎の魅力を持ち、欧米男性を誘惑する。極楽のような南の島で、驚異的な色彩の自然が横溢している。島民は何を考えているかわからない。そもそも誰が誰で何をしているのかもわからない。
映画は核実験が実際に始まりそうな潜水艦の場面を見せて終わる。やはりすべては幻想か。中盤で核実験の話が出てからはおもしろくなるし、幻想的な表現はなかなか見ごたえがあるが、やはり何のことかわからない。またもや「これが1位か」の1本。
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