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2025年7月28日 (月)

『オルエットの方へ』の凄まじさ

ジャック・ロジエの『オルエットの方へ』(1971年)を久しぶりに見た。たぶん2010年に日本で初めて劇場公開された時以来か。前に見た時は、例によってロジエ得意のバカンス映画で、女の子3人がいる海岸の別荘に中年男が闖入して嫌がられるおかしな物語という印象があった。

ところが今回見ると、これはロジエ監督の最高傑作ではないかと思った。3人の娘たちの騒ぎようといったら、「即興」という言葉が陳腐に思えるほど異様なまでの躍動感にあふれている。8月末から1日ずつが過ぎてゆき、いくつもの小さなできごとは解決されないままに時間だけが過ぎる。その凄まじい喪失感は、怖ろしいほど。

どこにも書いていないので、覚えているうちにきちんと物語を書きとめる。ある小さな会社で上司のジルベールは若い女性のジョエルを追いかけている。何とか昼ご飯に誘おうと思うが、ジョエルは友人のカリーヌと会う約束があった。会社のエレベーターで会った2人は外に出ていくが、ジルベールは何とか彼女たちと同じテーブルに座った。

カリーヌは友だちのキャロリーヌのお母さんがヴァンデ県の海岸沿いの別荘を貸してくれるので3人で行こうとジョエルに話す。ジルベールは聞いていない振りをしながら、しっかり聞いていた。

9月1日、ジョエル、カリーヌ、キャロリーヌはそれぞれ重いスーツケースを持って苦労しながら何とか別荘にたどり着いた。決して豪華ではないがそれぞれの部屋があり、3人は大喜びではしゃぐ。毎日何をするわけではないが、「オルエット」という標識を見るだけで大騒ぎ(ここから題名が来る)。

数日後、3人はジルベールと港で会う。ジョエルは気が進まないが、ほかの2人は賑やかになって嬉しい感じ。彼は翌日彼女たちの別荘にやってきて、泊めてもらえないかと頼む。結局、彼は庭にテントを張って住むことに。

みんなで「オルエットのカジノ」という場所に行くが、そこには壊された建物の跡しかなかった。それだけで3人は大騒ぎ。付近の漁民から大量の鰻をもらって家に持ち帰るが、鰻がバケツから飛び出して大混乱に。さてその後どうなったかは全く説明がなく、次の日になる。

ある時、3人はボートを持った青年パトリックに出会う。彼はカリーヌに惹かれるが、彼に関心を持ったのはジョエルだった。ジルベールは魚料理を大量に作るが、カリーヌは帰ってこないしキャロリーヌもジョエルもろくに食べない。とうとうジョエルは怒りだして、翌日パリに帰る。パトリックと喧嘩したカリーヌも数日後に去ってゆく。

さてバカンスが明けてジルベールもジョエルも普通に働き始める。ジルベールは別の女性にアプローチを始め、ジョエルは来年のバカンスを考える。「バカンス」という魔法の言葉に支配されたフランス人たちのおかしな日常がひたすら続き、人間の愚かで愛すべき姿が露呈してゆく。これぞ、「ヌーヴェル・ヴァーグ」!

 

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